第18話 あなたに会いたかった
1 約束ではない約束
二月に入ったばかりの夕方。
ひろきは、会社を出るとスマートフォンを確認した。
まさこからの新しいメッセージはない。
それを確かめて、少しだけ落胆した自分に気づいた。
いつから、こんなふうになったのだろう。
以前なら、仕事が終われば帰宅するだけだった。
まなみの待つ家に帰り、夕食を食べ、明日の仕事に備えて眠る。休日には買い物に出かけ、夫婦で家のことを相談する。
子どもができたら、そこに新しい生活が加わるはずだった。
けれど、子どもを望み続けた時間は長く、治療は二人の生活に大きな場所を占めるようになった。
いつしか、夫婦の会話は予定や手続きの確認が中心になっていた。
そのことを変えようと、ひろきも動き始めていた。
まなみと話す時間を作る。
彼女の考えを聞く。
治療を続けるかどうか、二人で考える。
どれも、必要なことだ。
それなのに、ひろきの心は、別の女性から届くメッセージを待っていた。
「……何やってんだ、俺は」
小さくつぶやき、スマートフォンをポケットにしまった。
帰ろう。
そう思った。
そのとき、画面が震えた。
まさこからだった。
『突然すみません。以前話していたことなのですが、少しだけ相談してもいいですか?』
ひろきは立ち止まった。
以前話していたこと。
それは、九条家のことだった。
まさこは、夫のしんいちと少しずつ話し合いを進めていた。子どもを授かることだけを人生の目的にしないために、これから何を大切にして暮らすのか、考えようとしていた。
その話なら、聞いてもおかしくない。
ひろきは、そう考えた。
『大丈夫ですよ。何かありましたか?』
返信すると、まさこからほどなくして返事が届いた。
『夫と、これからのことを話しました。以前よりは話せたと思います。でも、話せば話すほど、今まで言えなかったことが出てきてしまって』
『一度に全部を整理するのは難しいですよね』
『そうですね。頭ではわかっているんですけど、少し疲れてしまいました』
そこで、やり取りが止まった。
ひろきは、画面を見つめた。
会って話したい。
そう思った。
しかし、その言葉を送ることにはためらいがあった。
メッセージで話すだけなら、まだ説明がつく。
会うとなれば、違う。
二人が会うことを、誰かに知られたらどう説明するのか。
まなみに、しんいちに、それぞれ何と言えばいいのか。
考えれば考えるほど、送信ボタンを押す理由が見つからなくなった。
それでも、ひろきは指を動かした。
『もしよければ、今度また少し話しませんか? 以前のカフェでも』
送信した。
今度は、取り消さなかった。
まさこからの返信を待つ時間は、妙に長かった。
そして、数分後。
『ありがとうございます。私も、少しお話ししたいです』
続けて、もう一通。
『明後日の仕事帰りなら、時間が取れそうです』
ひろきは、その文章を読み返した。
明後日。
二日後だ。
予定を確認する必要はなかった。仕事が終われば、行くことはできる。
『わかりました。では、いつものカフェで』
送信すると、まさこから小さな会釈の絵文字が届いた。
それだけのやり取りだった。
好きだとも、会いたいとも言っていない。
二人の間に、明確な約束ができたわけでもない。
それでも、ひろきはスマートフォンをしまったあと、しばらく歩き出せなかった。
会える。
その事実が、思っていた以上に嬉しかった。
### 2 妻が選んだ時間
その夜、まなみは食卓で手帳を開いていた。
「ひろき、ちょっと相談していい?」
「うん、何?」
「来月なんだけど、学校の研修に参加しようと思ってるの」
「研修?」
「進路指導の研修。前から興味があったんだけど、治療の予定とかもあって、ずっと見送っていたから」
まなみは手帳を見ながら説明した。
研修は平日の夕方まで続く。
通院の予定を入れていた日と重なる可能性があるため、次の診察で日程を調整できるか相談したいという。
「いいんじゃない。行きたいんだろ?」
「うん。できれば参加したい」
まなみは少し不安そうに笑った。
「治療のことを考えると、こういう予定を入れていいのかなって、まだ迷うときがあるんだけど」
「予定を入れたっていいだろ。治療だけの生活じゃないんだから」
言ってから、ひろきは少し驚いた。
それは、以前の自分なら簡単には口にできなかった言葉だった。
治療を優先するべきではないか。
今は大事な時期なのではないか。
そんな考えが、いつも頭のどこかにあった。
けれど、まなみが自分の時間を取り戻そうとしていることを、今は応援したいと思っていた。
「ありがとう」
まなみは、安心したように笑った。
「私、これからは少しずつ、自分がやりたいことも考えてみようと思う」
「うん」
「もちろん、二人のことも考えたいよ。治療をどうするかも、これからどう暮らすかも」
「わかってる」
ひろきは頷いた。
まなみは、彼と生きることを諦めたわけではない。
彼女は、夫婦の未来を考えながら、自分の人生も大切にしようとしている。
それは、健全なことだった。
本来なら、ひろきも同じように自分の人生を考え、まなみと話し合っていけばよかった。
ところが、彼は自分の時間をどう使いたいのか、まだ正直に言えなかった。
まさこに会いたい。
その気持ちを、まなみに話すことはできない。
「そういえば、明後日は帰りが少し遅くなるかもしれない」
ひろきは、食器を片づけながら言った。
「仕事?」
「うん。ちょっと用事があって」
まなみは手帳から顔を上げた。
「わかった。夕飯はどうする?」
「外で食べてくるよ」
「了解」
それだけだった。
まなみは、詳しく聞かなかった。
ひろきも、詳しく説明しなかった。
まだ、会ってもいない。
まだ、何も起きていない。
ひろきは自分にそう言い聞かせた。
けれど、明後日の予定を妻に隠した時点で、彼はすでに一つの選択をしていた。
まなみと正直に向き合うことよりも、まさこと会うことを優先したのだ。
その事実から、目をそらしながら。
### 3 まさこの準備
同じ頃、九条家では、まさこがクローゼットの前に立っていた。
明後日は、ひろきと会う。
相談したいことがある。
それは本当だった。
しんいちとの話し合いは、以前より前に進んでいる。
夫は、まさこが治療を続けるかどうかについて、自分の希望を押しつけないよう努めていた。
九条家の跡継ぎについても、父の宗一郎と話をすると約束した。
ただ、長年にわたって身についた価値観は、簡単には変わらない。
しんいちが「君の気持ちを大切にしたい」と言っても、親族から跡継ぎの話が出れば、彼は一瞬、黙り込む。
その沈黙を見るたび、まさこは不安になった。
本当に変わろうとしているのか。
それとも、今だけ自分を安心させようとしているのか。
答えは、まだ出ていなかった。
だから、ひろきに話を聞いてもらいたかった。
そう考えながら、まさこは自分の服を選んでいた。
いつも仕事帰りに着ている服でいい。
特別に着飾る必要はない。
そう思っていたのに、手が止まった。
鏡に映る自分を見つめる。
ひろきは、どんな服装で来るだろう。
前に会ったとき、彼は疲れた顔をしていた。
それでも、話しているうちに少しずつ表情が柔らかくなった。
まさこは、その変化を覚えていた。
そして、自分もまた、ひろきと話しているときには、九条家の妻という役割から離れられる気がしていた。
彼の前では、跡継ぎのことを考えなくてもいい。
自分の弱さを隠さなくてもいい。
それが、心地よかった。
まさこは選びかけていた服を戻し、いつもの服を取り出した。
何をしているのだろう。
相談をするだけだ。
それなのに、会うことを楽しみにしている。
その気持ちを、まさこは否定できなかった。
寝室に戻ると、しんいちが書類を読んでいた。
「明後日、少し帰りが遅くなるわ」
まさこは言った。
「そうなのか。何か予定があるのか?」
一瞬、言葉に詰まった。
ひろきと会う。
そう言えばよかったのかもしれない。
ただ、しんいちに余計な心配をかけたくないという気持ちもあった。
何より、自分自身が、その約束をどう説明すればいいのかわからなかった。
「友人と話すことになっているの」
まさこは答えた。
嘘ではない。
けれど、すべてを伝えたわけでもない。
しんいちは書類を置いた。
「わかった。帰りは気をつけて」
「ええ」
彼は、それ以上尋ねなかった。
まさこは、その優しさにほっとした。
同時に、胸の奥が少し痛んだ。
しんいちは、彼女を信じている。
自分も、夫と向き合おうとしている。
それなのに、別の男性と会う予定を隠している。
まだ、何も起きていない。
そう言い聞かせることはできた。
しかし、隠さなければならない理由があるということを、まさこ自身もわかっていた。
### 4 会う前から、始まっていた
約束の日。
ひろきは、仕事が終わると、いつもより早く会社を出た。
カフェに向かう途中、何度も時計を確認した。
早く着きすぎても仕方がない。
そう思いながら、足取りは自然と速くなった。
店に到着すると、まだ約束の時間まで十五分あった。
ひろきは入口の近くで立ち止まり、ガラス越しに店内を見た。
まさこの姿はない。
少し安心し、同時に残念に思った。
自分は、何を期待しているのだろう。
ただ、話を聞くために来たのではないのか。
ひろきは店の前から離れ、近くの歩道をゆっくり歩いた。
仕事のことを考えようとした。
明日の予定。
提出する書類。
上司から指摘された箇所。
いくら考えても、頭の中にはまさこのことが浮かんでくる。
彼女は、何を話すのだろう。
夫とのことだろうか。
九条家のことだろうか。
それとも、自分と同じように、ただ誰かと話したいだけなのだろうか。
その可能性を考えたとき、ひろきは胸の奥が熱くなるのを感じた。
自分と会うことを、まさこも望んでいる。
そう思いたかった。
約束の時間が近づき、ひろきは店へ戻った。
そして、入口の前でまさこの姿を見つけた。
コートを着たまま、スマートフォンを手に持っている。
ひろきに気づくと、まさこは顔を上げた。
「ひろきさん」
「こんばんは」
「すみません、少し早く着いてしまって」
「僕も、今来たところです」
二人は、どちらからともなく笑った。
その笑顔は、特別なものではない。
久しぶりに会った知人同士の、自然な挨拶に見えた。
それでも、ひろきは思った。
会えてよかった。
まさこもまた、同じことを考えていた。
二人は店に入り、窓際の席に座った。
注文を済ませる。
最初は、仕事の話をした。
ひろきは、最近の現場で起きた小さな問題について話した。
まさこは、九条家で親族との話し合いが近づいていることを話した。
互いに、相手の話を聞いた。
やがて、まさこがカップを両手で包みながら言った。
「私、最近、少しずつ夫と話せるようになったんです」
「よかったですね」
ひろきは、本心からそう言った。
「でも、今まで言えなかったことを話すのって、思っていたより疲れますね。言葉にしたら、すぐに解決すると思っていたわけじゃないんですけど……話したあと、余計に寂しくなることもあって」
「わかります」
ひろきは頷いた。
「話せたからって、全部が変わるわけじゃないですからね」
「はい」
まさこは少し笑った。
「でも、ひろきさんも、奥様と話しているんですよね」
「ええ。以前よりは話すようになりました」
「よかった」
まさこはそう言って、ひろきを見た。
「ひろきさんも、頑張っているんですね」
その言葉が、胸に響いた。
まなみも、自分のことを気にかけてくれている。
けれど、まさこにそう言われると、何かが違うように感じた。
自分の努力を認めてもらえた。
弱いところも含めて、理解してもらえた。
そんな気持ちになった。
ひろきは、その感覚を手放したくなかった。
だから、まさこに尋ねた。
「まさこさんは、どうですか。無理していませんか?」
「……しているかもしれません」
まさこは少し考えてから答えた。
「夫と話そうと思うと、今まで我慢してきたことが、いろいろ出てくるんです。もっと早く言えばよかったと思うこともあるし、言っても変わらなかったらどうしようって思うこともあります」
「そうですよね」
「でも、言わないままだったら、きっと何も変わらないんですよね」
その言葉を聞いて、ひろきは目を伏せた。
まさこは、夫と向き合おうとしている。
自分も、妻と向き合おうとしている。
二人は、同じ方向を向こうとしているはずだった。
それなのに、こうして二人だけで会い、互いの気持ちを確かめ合っている。
その時間が、ただの相談ではなくなりつつあることを、ひろきは感じていた。
### 5 言えなかった本音
時計を見ると、約束していた時間を三十分ほど過ぎていた。
「そろそろ、帰りましょうか」
まさこが言った。
「そうですね」
ひろきは頷いた。
それなのに、席を立つ気になれなかった。
もっと話したい。
あと少しだけ、一緒にいたい。
何か特別な話をする必要はない。
今日のことでも、明日のことでもいい。
ただ、この時間が終わってしまうのが惜しかった。
まさこも、カップに残った飲み物を見つめていた。
「……もう少しだけ、いいですか?」
まさこが言った。
ひろきは顔を上げた。
「ええ」
その一言で、二人は席を立つのをやめた。
しばらく、沈黙が続いた。
店内には、ほかの客の話し声が聞こえていた。
誰かが笑い、店員が食器を片づけ、入口のドアが開閉する。
ありふれた夜だった。
その中で、二人だけが、時間を止めたいと思っていた。
「ひろきさん」
まさこが、静かに呼んだ。
「はい」
「今日は、ありがとうございました」
「いえ。僕も、話せてよかったです」
まさこは、少し迷ってから言った。
「私、今日、ここに来るのを楽しみにしていたんです」
ひろきは、息を止めた。
まさこは続けた。
「相談したいことがあったのは、本当です。でも、それだけじゃなくて……ひろきさんと話したかったんだと思います」
彼女の声は、かすかに震えていた。
「こういうことを言うのは、よくないのかもしれませんね」
ひろきは、すぐには答えられなかった。
自分も同じだったからだ。
相談したいことがある。
話を聞きたい。
そういう理由をつけて、会う約束をした。
けれど、本当は。
ひろきも、まさこに会いたかった。
彼女の顔を見たかった。
声を聞きたかった。
自分のことを、どう思っているのか知りたかった。
「……僕もです」
気づけば、そう答えていた。
まさこが顔を上げる。
「え?」
「僕も、今日、会えるのを楽しみにしていました」
ひろきは、自分の言葉を聞きながら、胸が苦しくなった。
これは、嘘ではない。
初めて、自分の本音を口にした気がした。
けれど、本音を口にしたからといって、何も解決したわけではない。
むしろ、今まで曖昧にしていたものが、はっきりと形を持ち始めた。
まさこは、しばらくひろきを見つめていた。
やがて、小さく笑った。
「……そうなんですね」
その笑顔を見て、ひろきは嬉しくなった。
そして同時に、恐ろしくなった。
自分の言葉が、まさこに何かを期待させてしまったのではないか。
自分自身も、彼女に何かを期待し始めているのではないか。
二人は、何も約束していない。
互いに、愛しているとも言っていない。
ただ、会いたかったと伝えただけだ。
それなのに、帰り道を考えると、胸が重くなった。
家に帰れば、まなみがいる。
まさこには、しんいちがいる。
二人とも、今の結婚を簡単に捨てたいわけではない。
それでも、互いに会いたかった。
その事実は、消せなかった。
### 6 帰り道の沈黙
店を出ると、夜の空気は冷たかった。
二人は駅へ向かって歩き始めた。
人通りのある道だった。
肩が触れるほど近くはない。
手が届くほど近くもない。
ただ、並んで歩いている。
それだけだった。
「寒いですね」
まさこが言った。
「そうですね。まだ冬ですね」
ひろきは笑った。
何気ない会話だった。
しかし、ひろきは、この道がいつまでも続けばいいと思っていた。
駅が近づく。
改札の前で、まさこが足を止めた。
「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ」
「また、相談してもいいですか?」
ひろきは、すぐに答えた。
「もちろんです」
その返事が早すぎたことに、自分でも気づいた。
まさこも気づいたのか、少しだけ目を伏せた。
「……ありがとうございます」
二人は、しばらくその場に立っていた。
何か言いたい。
けれど、何を言えばいいのかわからない。
まさこは、改札の向こうへ歩き出した。
数歩進んだところで、一度だけ振り返った。
ひろきは、まだそこに立っていた。
目が合う。
まさこは小さく会釈し、今度こそ改札の向こうへ消えていった。
ひろきは、彼女の姿が見えなくなっても、しばらく動けなかった。
会えてよかった。
本当に、そう思った。
それから、少し遅れて、別の感情がやってきた。
後ろめたさ。
まなみに言えない。
しんいちにも言えない。
今日、何を話したのか。
どんな気持ちで会いに来たのか。
なぜ、別れ際にあんなにも寂しかったのか。
正直に説明することができない。
ひろきは、駅の時計を見た。
帰らなければならない。
まなみが待つ家へ。
彼は歩き出した。
電車の窓に映る自分の顔を見ながら、ひろきは思った。
自分は、何をしているのだろう。
まなみとの関係を立て直そうとしていたはずだ。
まさことの関係も、ただの相談相手として保つつもりだった。
けれど、今はもう、それだけではなかった。
まさこに会いたかった。
その気持ちは、確かにあった。
そして、その気持ちをまさこに伝えた。
もう、完全に知らなかった頃の自分には戻れない。
それでも、ひろきは自分に言い聞かせた。
まだ、引き返せる。
まだ、何もしていない。
ただ会って、話しただけだ。
そう言い聞かせながら、彼は帰宅した。
玄関を開けると、まなみがリビングから顔を出した。
「おかえり。遅かったね」
「うん。ちょっと話が長くなって」
「そっか。お疲れさま」
まなみは、それ以上尋ねなかった。
ひろきは、彼女の顔を見た。
自分を信じている人の顔だった。
その信頼が、ひろきの胸に刺さった。
「まなみ」
「なに?」
「……いや。何でもない」
まなみは少し不思議そうにしたが、やがて笑った。
「お風呂、沸いてるよ」
「ありがとう」
ひろきは浴室へ向かった。
扉を閉め、鏡に映った自分の顔を見た。
何も変わっていない。
いつもの自分だ。
仕事をして、家に帰り、妻と暮らしている。
それなのに、心の中には、まさこと過ごした時間が残っていた。
会いたかった。
その気持ちを認めた瞬間、二人の関係は、以前とは違うものになり始めていた。
まだ、手をつないだわけではない。
抱きしめたわけでもない。
まして、肉体関係を持ったわけでもない。
けれど、ひろきは初めて、まなみに隠したいと思う時間を、自分から作ってしまった。
そして、まさこもまた、その時間を望んでいた。
二人は、まだ境界線を越えていない。
しかし、その境界線の前で立ち止まり、互いに相手を求めていることを知ってしまった。
それが、何よりも危うかった。
### 次回予告 第19話「冬の夜の過ち」
数日後。
ひろきとまさこは、再び会うことになる。
今度は、相談のためだけではなかった。
互いに、会いたいという気持ちを知ってしまった二人。
帰るべき場所があることも、傷つける人がいることも、わかっている。
それでも、その夜、二人は自分たちの気持ちを止められなくなる。
そして翌朝、ひろきは初めて、自分が取り返しのつかない一歩を踏み出したことを知る。




