不肖ながら、お嬢様は渡しません
──私のせいではない。断じて。いや、断固として、である。
そう心の中で言い切るたびに、なぜか己の胸に鋭く突き刺さる何かがあるが、それはまったくの無関係だ。
お嬢様がまたしても婚約破棄をされ、部屋の隅で膝を抱えて沈んでいるのは私のせいではない。決して、決して。なぜなら私はただの執事──いや、元蜘蛛の執事に過ぎないからだ。
「──私のせいです。申し訳ございません、お嬢様」
◆◆◆
元はただの蜘蛛だったクロードは、ある少女の優しさによって命を救われる。そして彼は誓った──いつか必ず彼女の傍に立つと。
時は流れ、クロードは人の姿を得て、彼女の執事となる。誰よりも忠実に仕え、完璧に職務をこなす彼だったが、ある問題があった。彼女の婚約者たちは皆、彼の恐ろしい視線に恐れをなし、次々と逃げ出すのだ。
だが、ある日彼女が王都の騎士団長に求婚され、クロードの世界は揺らぎ始める。彼女のために身を引くべきか、それとも──。
「──不肖ながら、お嬢様は渡しません!」
忠誠と愛が織りなす糸の行方は、果たして“幸福”へと紡がれるのか──?
そう心の中で言い切るたびに、なぜか己の胸に鋭く突き刺さる何かがあるが、それはまったくの無関係だ。
お嬢様がまたしても婚約破棄をされ、部屋の隅で膝を抱えて沈んでいるのは私のせいではない。決して、決して。なぜなら私はただの執事──いや、元蜘蛛の執事に過ぎないからだ。
「──私のせいです。申し訳ございません、お嬢様」
◆◆◆
元はただの蜘蛛だったクロードは、ある少女の優しさによって命を救われる。そして彼は誓った──いつか必ず彼女の傍に立つと。
時は流れ、クロードは人の姿を得て、彼女の執事となる。誰よりも忠実に仕え、完璧に職務をこなす彼だったが、ある問題があった。彼女の婚約者たちは皆、彼の恐ろしい視線に恐れをなし、次々と逃げ出すのだ。
だが、ある日彼女が王都の騎士団長に求婚され、クロードの世界は揺らぎ始める。彼女のために身を引くべきか、それとも──。
「──不肖ながら、お嬢様は渡しません!」
忠誠と愛が織りなす糸の行方は、果たして“幸福”へと紡がれるのか──?
【プロローグ】あの執事だけは、敵に回すな
2025/03/19 23:25
(改)
執事は雄弁に沈黙する
2025/03/18 13:20
執事は保身故に献身する
2025/03/18 13:20
執事は不機嫌になっていないと不機嫌に答えた
2025/03/19 23:23
執事が蜘蛛だった頃のおはなし
2025/03/19 23:24
執事はその期待に絶望する
2025/03/20 21:41
執事は男爵様よりお嬢様が大事
2025/03/20 23:22
執事は謝罪ではなく決意を表明する
2025/03/21 18:33
執事は古巣よりも、同胞よりも、お嬢様が大事
2025/03/21 23:46
執事は最高に最悪な解決策を見いだす
2025/03/22 19:19
お嬢様は……渡しません
2025/03/22 23:46
不肖ながら、お嬢様は渡しません
2025/03/23 18:32
執事は新郎となり、そして男爵様は
2025/03/24 00:28
新郎は騎士団長にご挨拶する
2025/03/24 21:48
【本編完結】新郎は新婦へ永遠の愛を誓う
2025/03/24 23:38
【番外編】新妻アトラの愛情
2025/03/25 22:26
【番外編】男爵の敗北と誇りについて
2025/03/26 23:46
【番外編】騎士団長ウィルはいいように使われる
2025/03/27 23:37
【番外編】大蜘蛛レンの愉悦
2025/03/29 07:58
【番外編】お義父さんとの晩酌
2025/03/30 00:20
【新章】手紙は雄弁に語る──『執事自慢へのささやかな返礼』
2025/03/30 23:55
執事の逆鱗──『手紙は慎重に書くべきだ』
2025/03/31 23:46
失礼の定義──『言葉よりまずはお湯加減』
2025/04/01 23:31
忠誠心の意味──『蜘蛛にさえもあるもの』
2025/04/03 00:24
執事勝負──『我が家の誇りにかけて』
2025/04/03 23:55
過ぎたる饗応──『料理は心なり、とは言いますが』
2025/04/05 00:01
小さな宝石店で──『今日も妻の瞳に恋をする』
2025/04/06 00:41
午後の決闘──『茶葉の数だけ誇りがある』
2025/04/07 00:45
優雅なる一戦──『執事の戦は、茶卓の上で』
2025/04/07 23:37
執事の秘策── 『花も恋も、カップの中で開く』
2025/04/08 23:02
傾城茶宴──『思わせぶりは礼儀のうちでございます』
2025/04/10 00:01
正義の匙加減──『美味とは、誠実なり』
2025/04/11 00:01
秘めごとはティーカップの底に──『侯爵夫人の冗談半分、秘密半分』
2025/04/12 01:48
執事の履歴書──『妻のためなら、公爵家も辞す』
2025/04/12 23:41
傲慢なる継承──『ある父親と、その娘』
2025/04/14 01:01
素顔の執事──『クロード、崩される』
2025/04/15 00:49
仮面の綻び──『忠義と誘惑の境界線』
2025/04/16 00:44
残響の中で──『奪われたのは、唇か、それとも誇りか』
2025/04/16 23:46
【男爵視点】愛情の断層──『飾られた愛、こぼれ落ちた真実』
2025/04/18 00:24
【男爵視点】壊れた家族──『愛は誰のためにあったのか』
2025/04/19 00:45
(改)
【男爵視点】勝ち負けでは測れぬもの──『執事勝負の裏側で』
2025/04/20 00:08
【男爵視点】家族の輪郭── 『義理の息子への、変わらぬ信頼』
2025/04/21 00:20
眠れぬ朝に──『準男爵アポロ、現る』
2025/04/21 23:52
路地裏の邂逅──『正義と無頼と元蜘蛛』
2025/04/22 23:53
執事と騎士──『正論と詭弁』
2025/04/23 22:55
騎士団宿舎騒動録──『誤解、そして追い打ち』
2025/04/25 00:52
執事の決意──『帰る理由は、食卓の向こうに』
2025/04/25 22:06
足音の余韻──『言葉にできぬ疑念』
2025/04/26 22:12
三人の帰路──『再会は騒がしく、温かく』
2025/04/27 23:22
交差する視線──『それぞれの想い、それぞれの誠意』
2025/04/29 00:01
【アポロ視点】深淵の太陽──『影と野望の交差』
2025/04/30 00:21
誇りの行方──『賭けるものは愛か、名誉か』
2025/05/20 22:29
紅と白の対決──『静かな対決、注がれる思惑』
2025/05/20 22:30
天秤の上の忠誠──『黄金より重いもの』
2025/05/21 23:00
見えない輪郭──『言葉にならぬ謎を抱えて』
2025/05/21 23:01
仮面の晩餐──『微笑の裏にあるもの』
2025/05/31 13:50
静かな調和──『美食と葡萄の物語』
2025/05/31 13:51
グラスの中の運命──『二つの味の対比』
2025/05/31 13:51
静かな波乱──『煙に巻かれた陰謀』
2025/05/31 13:53
罪と疑惑──『真実は静かに揺れる』
2025/06/01 00:48
静かな決意──『守るべきもののために』
2025/06/01 00:48
忠実なる糸──『夜を渡る覚悟』
2025/06/02 00:35
【ティタ視点】二律背反の夜──『心はまだ、選べない』
2025/06/02 00:35
【ティタ視点】記憶の断片──『真実に気付いた日』
2025/06/08 17:11
【ティタ視点】闇に射す光──『想いはどこへ還るのか』
2025/06/08 17:12
執事の矜持──『光と影の隙間で』
2025/06/28 11:04
執事の手際──『優雅なる迎撃』
2025/06/28 11:05
執事の切札──『静かな劇場の幕引き』
2025/06/28 22:49
静穏の食卓──『誤認逮捕と朝の赦し』
2025/06/29 13:35
不可逆の決断──『そして伯爵令嬢は微笑んだ』
2025/06/30 21:43
結び目の先──『まだ終わっていない君たちへ』
2025/06/30 23:31
執事の一分──『優雅なる宣戦』
2025/07/01 13:25
執事の選択──『忠誠と罰が交差する午後』
2025/07/02 13:04
執事の審判──『忠誠と欲望の間で』
2025/07/02 23:27
静かな攻防──『その身ひとつで、答えを求めて』
2025/07/03 18:06
終幕の伏線──『立ち上がる者と、微笑む者』
2025/07/04 12:15
秘された真実──『執事はかつて人ならざるものだった』
2025/07/05 11:51
その名前の意味──『クロードとサンゼール』
2025/07/06 13:17
抗いの意味──『羽なき蝶と足なき蜘蛛は』
2025/07/07 12:30
その名に刻む執念──『お嬢様は、渡しません』
2025/07/09 12:25