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紅と白の対決──『静かな対決、注がれる思惑』

──ワインを選ぶということは、自らの感性を曝け出すということだ。


私たちはそれぞれの誇りをグラスの中に映し出す。


広間には穏やかな午後の陽光が柔らかく差し込み、窓辺のカーテンが風に揺れて静かな影を床に落としている。


そこに立つ伯爵の表情はいつにも増して真剣だった。その眼差しには、これから語られる言葉が決して軽いものではないという緊張感がにじんでいた。


「次の勝負は、ワインのテイスティングと選定にする」


伯爵の落ち着いた声が広間に響き渡った。その言葉を耳にした瞬間、私は胸の奥で小さく息をついた。伯爵はさらに静かな口調で言葉を継いだ。


「公平を期すため、ワインは我が邸のワインセラーを使用する。招待客のため、今夜の夕食に最もふさわしい一本を選ぶのだ」


私の視界の隅で、サンゼールが静かに目を伏せたのが分かった。その仕草からも彼の真剣な思いが伝わってくる。


「サンゼールは魚料理に、クロードは肉料理に合うワインを選ぶように」


伯爵の指示は明確だった。私とサンゼールの視線が一瞬交差する。互いに言葉は交わさないが、その瞳の奥に秘められた決意がはっきりと感じられた。


広間に張りつめる静かな空気を破ったのは、アポロの気だるげな声だった。


「それで、その素晴らしい勝負の判定を下すのは一体どこのどなたかな?」


アポロは相変わらず飄々とした表情で伯爵を見つめる。その態度には常にどこか皮肉めいたものが漂っていた。


伯爵の視線が鋭くアポロに注がれる。ほんの一瞬の間だったが、その沈黙の中に伯爵の静かな怒りが感じ取れた。


「王都の名士、バリガ・ミカンス・マクラクラン氏をお招きした。氏の公平な判断に委ねることになる」


伯爵の言葉が終わるや否や、アポロの表情が僅かに変わった。驚きとも取れるような、一瞬の動揺を彼の涼しげな瞳が捉えた。しかしすぐにその表情はいつもの皮肉な微笑へと戻り、彼は押し殺したように静かに笑った。


「なるほど、バリガ・ミカンスか。こりゃまた面白い!」


そのアポロの含みのある笑みに、私は言葉にできない不安を覚えた。彼がその名を聞いてなぜそんな反応を示したのか──心の奥に小さな疑念が芽生えたが、表情には一切出さずに私は静かに視線を逸らした。


再び静けさが戻った広間には、微かな緊張が漂っている。


アポロの予測不能な態度、伯爵の揺るぎない決意、サンゼールの静かな闘志。さまざまな感情が交錯する中、私は改めて心を落ち着かせ、冷静さを取り戻そうとしていた。


窓の外を見やると、柔らかな風が庭の木々を静かに揺らしている。その風景は平穏で美しく、この邸宅を取り巻く出来事とは対照的に穏やかだった。しかし、その平穏さえも、これから起こるであろう波乱の幕開けを予兆しているかのように私には感じられた。


この勝負に賭けられたものは単なる名誉ではない。サンゼールは大切な人のために人生をかけ、私は妻と自分自身の誇りのために決断を下す。私たちは互いに敬意を持ちつつ、この重みを背負って立っているのだ。


心の奥に再び決意を刻みつけ、私は静かに息を整えた。

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