↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

「針仕事しかできない地味令嬢はいらない」と婚約破棄されましたが、王太子妃の婚礼衣装を救った私を追い出した侯爵家は、王家御用達も信用も失ったようです

作者:ろくさんだ
最新エピソード掲載日:2026/09/15
「針仕事しかできない地味令嬢はいらない」

 王家御用達の仕立工房を継ぐ婚約者セルジュに、客と職人の前でそう告げられ、エレノアは椅子ごと席を片づけられました。

 三年のあいだ、王家の意匠を引き、原型を裁ち、徹夜で直しを入れてきたのは彼女です。けれどその功績はすべて、義妹ミレーヌのものとして飾られてきました。

 ちょうどその場に、王太子妃殿下がいらしていました。

 殿下のお召し物の袖には、歪みがありました。エレノアは許可を得て、三針だけ直します。腕を上げても、布は引きつれませんでした。

 そして、静かに尋ねました。

「では、この三十二着はどなたが仕上げますの?」

 王家より承った十二着。ご参列の方々の二十着。まだ一着も仮縫いを通していません。裁つ前に身体を測らず、裁った後に確かめもしない――それがこの工房のやり方でした。

 殿下は、王家からの十二着をその場で撤回なさいました。

 そして仕立場の隅に立っていた公爵は、エレノアの手を取りませんでした。代わりに招請状を仕立台へ置いて、こう言ったのです。

「仕事を受けるか、場所を見るか、すべてあなたが選んでください」

 エレノアは復讐しません。妨害もしません。ただ、きちんと仕上げられる場所で、一着ずつ仕上げていくだけです。

 けれど彼女が一着仕上げるたび、旧工房からは注文が消え、職人が去り、違約金が積み上がっていきます。

 王家御用達の看板が外れる日まで、あと何着でしょうか。

 ――針しか持てない女が、婚礼衣装で王都の信用を縫い直す話です。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。