「針仕事しかできない地味令嬢はいらない」と婚約破棄されましたが、王太子妃の婚礼衣装を救った私を追い出した侯爵家は、王家御用達も信用も失ったようです
最新エピソード掲載日:2026/09/15
「針仕事しかできない地味令嬢はいらない」
王家御用達の仕立工房を継ぐ婚約者セルジュに、客と職人の前でそう告げられ、エレノアは椅子ごと席を片づけられました。
三年のあいだ、王家の意匠を引き、原型を裁ち、徹夜で直しを入れてきたのは彼女です。けれどその功績はすべて、義妹ミレーヌのものとして飾られてきました。
ちょうどその場に、王太子妃殿下がいらしていました。
殿下のお召し物の袖には、歪みがありました。エレノアは許可を得て、三針だけ直します。腕を上げても、布は引きつれませんでした。
そして、静かに尋ねました。
「では、この三十二着はどなたが仕上げますの?」
王家より承った十二着。ご参列の方々の二十着。まだ一着も仮縫いを通していません。裁つ前に身体を測らず、裁った後に確かめもしない――それがこの工房のやり方でした。
殿下は、王家からの十二着をその場で撤回なさいました。
そして仕立場の隅に立っていた公爵は、エレノアの手を取りませんでした。代わりに招請状を仕立台へ置いて、こう言ったのです。
「仕事を受けるか、場所を見るか、すべてあなたが選んでください」
エレノアは復讐しません。妨害もしません。ただ、きちんと仕上げられる場所で、一着ずつ仕上げていくだけです。
けれど彼女が一着仕上げるたび、旧工房からは注文が消え、職人が去り、違約金が積み上がっていきます。
王家御用達の看板が外れる日まで、あと何着でしょうか。
――針しか持てない女が、婚礼衣装で王都の信用を縫い直す話です。
王家御用達の仕立工房を継ぐ婚約者セルジュに、客と職人の前でそう告げられ、エレノアは椅子ごと席を片づけられました。
三年のあいだ、王家の意匠を引き、原型を裁ち、徹夜で直しを入れてきたのは彼女です。けれどその功績はすべて、義妹ミレーヌのものとして飾られてきました。
ちょうどその場に、王太子妃殿下がいらしていました。
殿下のお召し物の袖には、歪みがありました。エレノアは許可を得て、三針だけ直します。腕を上げても、布は引きつれませんでした。
そして、静かに尋ねました。
「では、この三十二着はどなたが仕上げますの?」
王家より承った十二着。ご参列の方々の二十着。まだ一着も仮縫いを通していません。裁つ前に身体を測らず、裁った後に確かめもしない――それがこの工房のやり方でした。
殿下は、王家からの十二着をその場で撤回なさいました。
そして仕立場の隅に立っていた公爵は、エレノアの手を取りませんでした。代わりに招請状を仕立台へ置いて、こう言ったのです。
「仕事を受けるか、場所を見るか、すべてあなたが選んでください」
エレノアは復讐しません。妨害もしません。ただ、きちんと仕上げられる場所で、一着ずつ仕上げていくだけです。
けれど彼女が一着仕上げるたび、旧工房からは注文が消え、職人が去り、違約金が積み上がっていきます。
王家御用達の看板が外れる日まで、あと何着でしょうか。
――針しか持てない女が、婚礼衣装で王都の信用を縫い直す話です。
片づけられた椅子と三針
2026/09/08 12:46
私が決める仕立場
2026/09/08 16:43
三つの仕立台
2026/09/08 16:43
歩ける旅装
2026/09/08 16:44
傷を花に変えるベール
2026/09/08 16:44
選ばれた乳白色の絹
2026/09/08 16:44
同じ光
2026/09/08 16:45
残ると決めた手
2026/09/08 16:45
三日で二着、八日で十一着
2026/09/08 16:45
座って笑える披露宴衣装
2026/09/08 16:46
踊れば分かる衣装
2026/09/08 16:46
三針を隠さない胴着
2026/09/08 16:46
切らなかった赤い糸
2026/09/08 19:30
選んだ席で縫う四着
2026/09/09 19:30
噂に急がない三針
2026/09/11 00:22
名札では留まらないベール
2026/09/11 19:30
裂けた袖
2026/09/12 19:30
十一着に残った三針
2026/09/13 19:30
原型棚の鍵
2026/09/14 19:30
三十二着すべてを救う
2026/09/15 19:30