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その英雄、竜を殺していません ~王都経歴調査所は英雄譚を記録から確かめる~

作者:瀬川 理久
最新エピソード掲載日:2026/11/05
王都経歴調査所。

王宮、騎士団、学院、商会から依頼を受け、重要な地位に就く人物の経歴が事実かどうかを確かめる調査所だ。

調査員クラウス・フェインのもとに持ち込まれたのは、《北境の竜殺し》と称えられる騎士マティアス・レーマンの副団長任用審査。

勲章もある。推薦状も山ほどある。
誰もが彼を英雄だと信じている。

だが推薦状を読み分けたクラウスは、一つの奇妙な事実に気づく。

――誰も、彼が竜を殺したところを見ていない。

さらに当日の記録を追うと、竜が斃れた時刻、マティアスが別の場所にいた可能性まで浮かび上がる。

しかも本人は、一度も「自分が竜を殺した」とは言っていなかった。

では、誰が彼を英雄にしたのか。
そして、その英雄譚の陰で、誰の名前が消されたのか。

証言、軍歴、配置記録、輸送記録、帳簿。
クラウスは一つずつ記録を照合し、「確認できた事実」だけを積み上げていく。

嘘を暴くためではない。
誰かを裁くためでもない。

何が事実だったのかを、正しい形で残すために。

記録と手続きから英雄譚をほどいていく、異世界職業ミステリー。
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