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冷血公爵は毎朝わたしを忘れ、毎晩もう一度恋をする

作者:臥裳斗真
最終エピソード掲載日:2026/10/31
 三十日後、公爵アルヴィンは、私を完全に忘れる。

 閉店を十二日後に控えた古着店で働く、記憶仕立て師リネットへ、王太后から奇妙な依頼が届いた。

 王国最強の公爵のため、三十日後までに葬礼服を仕立てよ。

 けれど公爵は死ぬわけではないという。手首に浮かぶ三十本の白い枝だけが、毎朝一本ずつ消えていく。

 初対面のはずなのに、彼はリネットの癖も、砂糖の数も知っている。ところが翌朝になると、彼女と過ごした時間だけを忘れていた。

「昨日、ここで採寸をしました」

「……そうか」

 忘れているのに、彼の手だけは彼女を守ろうとする。

 古い外套に残された赤い縫い目。明日の自分へ宛てた手紙。そして、生きている彼が葬礼服を必要とする理由。

 白い枝がすべて消えるまで、あと三十日。

 毎朝他人に戻る公爵と、昨日を一人で覚えている仕立て屋の、期限つきの恋が始まる。
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