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無窮のヴィタルマナ

作者:誤日脱日
最終エピソード掲載日:2026/06/10
「流れた血の量だけ怨嗟は長く、そして深く刻まれる。何故それが解らないのですか――」

西暦二一六八年。

人口は六億にまで減り、人類は争うことにも飽きて、国境を捨て、ひとつの世界へまとまった。
戦争も飢えもない、満ち足りたディストピア。

その繁栄を底から支えるのは、不老の新人類「ヴィタルマナ」——食糧を生み出しながら、壁の向こうへ隔離され、人の数に入れてもらえない者たちだった。
天日(アメノヒ)も、その一人だ。隔離された生にありながら、彼は何ひとつ不満を持たない。
むしろ、ありふれた一日が、過不足なく今日も終わること。それだけを、静かに愛していた。

ある夜、その街がテロリストの手に落ちる。差別をなくすため、共存のため——掲げられる旗は、どれも美しい。
だが正しさを信じる者ほど、決して譲らない。やがて、世界そのものを引き換えにする脅迫が、ひどく落ち着いた声で告げられる。

最も戦いから遠かったはずの男が、気づけば、その渦の中心に立っていた。

彼の望みは、たったひとつ。
明日も、今日と変わらない朝が来ること。その取るに足らない願いのために、誰よりも穏やかなこの男は、何を選び、何を切り捨てるのか。

そして——なぜ自分がそこまでするのか。その理由を、彼自身さえ、もう思い出せずにいる。
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