第八話「炎と落ち葉」
「力そのものは、ただそこに在るだけです」
アウローラの告白を受けて、天日たちは地下8階作戦会議室にいた。未知に対する人間の本能的な恐怖にボルト隊はどう向き合っていくのか……
雨は降っていない。だが晴れてもいない。
灰白色の雲が低く垂れ込め、リグ・ベータ社の窓からは陽の差す気配すら窺えなかった。
もっとも、地下八階の作戦会議室には窓そのものが存在しない。天候がどうであれ、ここには関わりのない話だ。空調のかすかな駆動音だけが満ちるこの部屋には、いっそ曇天がよく似合う気がした。
ディスプレイから、アウローラの声が静かに流れている。
『――たとえ心にないようなことであっても、相手が自ら望んでいたかのように錯覚させ、その気にさせてしまう』
先日の映像記録だった。
SCTDに与えられたこの一室――テロのあった夜と同じリグ・ベータ社の会議室――に、あの日と変わらぬ顔ぶれが揃っている。ボルト大佐、マリィ、セイヴ、シモン、アナスタシア。
SCTDには他にも人員が割かれているが、今この場にはいない。中央区に大掛かりな軍の設備はなく、警察への間借りは上層部いわく「軍の沽券に関わる」とのことで却下されたという。ボルトはそれを聞いて、ただ呆れていた。
映像が途切れると、真っ先に声を上げたのはマリィだった。
「そんなことって。――それはもう、洗脳と呼ぶべきものだわ」
椅子の背に体を預けていたマリィが、身を起こしてテーブルへ手を置いた。指先が立ち、白くなるほど力がこもっている。
アウローラが「呪い」と呼んだ、ヴィタルマナの宿す他者を感化する能力。――その輪郭が言葉として明確になったことで、研究者としての警戒が一気に表層へと押し上げられたのだろう。
「もしそんなことが本当に可能なら、政治はもちろん、宗教も、産業も――あらゆる分野をヴィタルマナが席巻することになる……議会が恐れるのも、無理はないわ」
「落ち着け、マリィ」
ボルトが片手をマリィの肩へ置いた。その視線が、促すように天日へと向く。マリィは誘導の意図に気づき、口を噤んだ。
「――ごめんなさい」
天日に向けた謝罪だった。天日自身は気に留めていなかったが、気にしていないと口にすれば、かえって相手に気を遣わせてしまう。だから黙って、首を横に振るにとどめた。
「天日、君はどう思う」
ボルトの問いに、天日は一拍おいてから口を開いた。
「マリィさんの懸念はもっともです。ただ――分からないことのほうが多い、というのが正直なところです。それに、単に他者へ影響を与えるというだけなら、現実にいま起きていることと、さほど変わらない気もするんです。政治にしても宗教にしても、人は理屈として正しいから信じている、というわけではありませんから」
「つまり――その能力があったとして、だからどうした、とでも言うのか」
ボルトの声に咎めの色はなかった。ただ、確かめている。
「いえ。ただ――たった一人のカリスマが、大勢の民衆を巻き込んで起こした事件は、オリジンの歴史にもいくつもあります」
天日は右手を持ち上げ、人差し指と親指で銃の形を作った。その指先を、ボルトへと向ける。
「たとえば、僕のこの指から銃弾を撃てるとしたら――ボルト大佐は、どう思いますか」
「そりゃあまあ、ずいぶんと物騒な話だな」
「ですよね。僕だって、怖い。ですが――」
天日は指先の照準をすっとずらし、ボルトの腰のホルスターを示した。
「ボルト大佐がそのハンドガンを手にすれば、同じことができてしまう。実際の脅威そのものは、さほど変わらないんです」
ボルトはホルスターからハンドガンを抜き取り、手のなかで転がすように眺めた。
「力なんてものは、結局、使う者次第ってことか」
「力そのものは、ただそこに在るだけです」
天日は一度言葉を切り、マリィへ視線を移した。
「ですが、マリィさんの言うことも解ります。未知を恐れるのは、生きとし生けるものの本能です。問題は、その『程度』でしょう。どれほどの人数に、どれほどの行動を強いることができるのか。どのくらいの時間、効力が持続するのか。仮に世界中の人間を意のままに操れる力だとすれば、それはもはや、生物には過ぎた代物です。かつて人類が生み出した核のように、存在そのものを罪に問うことにもなりかねない。――いずれにせよ、能力を正確に見極めないことには、何とも言えません」
もっともらしく述べてはみたものの、煎じ詰めれば「よく分からない」と言っているに過ぎない。それは天日自身、よく承知していた。
ただ、力そのものを断罪の対象にすべきではない。――そんな思惑が、いくらか働いていたのは確かだった。
「でも、アウローラ自身も『呪い』と――それに、議会が恐れているなんて」
「決めつけるわけではありませんが、もし政治が間違えないものなら、人類の歴史はこうはなっていません」
天日は無責任に笑顔を作ってみせた。マリィの眉がわずかに動いたが、その表情は先刻より幾分やわらいでいた。
「確かに、冷静に考えてみれば――天日くんの言うことも、解るわ」
「あくまで、憶測の上での話ですが」と天日は前置きを添えた。「今のところ、議会が抱くほどの脅威があるとは思えません。まず、この能力を扱えるヴィタルマナ自体が、ごく稀であること。そして仮に洗脳めいたことができたとしても、せいぜい多少手続きが簡便になる、という程度ではないかと。ディマンド=ツェツェにしても――『あれば便利』くらいに捉えている気がします」
「それでも十分に怖いと思うけど……ずいぶん、あっさり言うのね」
マリィは呆れたように肩を落としたが、その声色には、どこか安堵が滲んでいた。
「前々から思っていたけど――天日くんって、どこか浮世離れしているわよね」
天日はその評価を、否定も肯定もしなかった。代わりに、別の話を切り出した。
「実は――たぶん、なんですが。僕も、アウローラの力の影響を受けた気がするんです」
「なんで、それを先に言わないの、天日くん」
ボルトが目を丸くした。
「すみません。あの時は、小さな違和感を覚えた程度で、何が起きたのかまでは分からなかったんです。突然、僕のなかに、もともとは存在しなかったはずの使命感のようなものが芽生えた。ふと何かを思い出した――そんな、不思議な感覚でした。今になって思えば、あれはディマンドを止めようとするアウローラの想いに、感化されたのかな、と」
テロの起きた日、雨のなかでアウローラと目が合った、あの一瞬を反芻しながら、天日は語った。
「ただ――記憶を操作されたり、書き換えられたりした覚えはありません。少なくともアウローラの力に限って言えば、前後の文脈もなしに、いきなり言動へ直接働きかけるのは難しいように感じます。もちろん、本人が意図的に出力を制御できるなら、話は別ですが」
「……そうね。私から見ても、天日くんが急に変わったようには見えないわ」
「いずれにせよ、もう一度アウローラと会って、話すべきだと思っています。それに――ディマンドは、僕にもその力を感じ取ったそうですから」
ボルト大佐は腕を組み、数秒だけ思案した。が、すぐに口を開いた。
「分かった。その能力の件は、すまんが天日に任せる。ディマンドへ繋がる糸口になるかもしれん。議会は知ったうえで隠しているんだ。いまさら聞いたところで、何も教えちゃくれんだろうしな」
その言葉で、天日はようやく、自分が本題から逸れていたことに気づいた。
SCTDの本来の任務は、新たなテロの予防と、いざ起きた際の阻止にある。
「目下の作戦は、内通者の調査と、セキュリティ対策の強化だ。諜報活動は警察との合同になる。セイヴ、手筈どおりに動いてくれ」
「了解です」
ここまで黙って耳を傾けていたセイヴが、短く応じた。
「マリィはセキュリティ対策を頼む。内務省の防衛システムはもちろん、あらゆる機関システムへの攻撃を警戒する必要がある。中東リージョンの専門部署と連携してくれ。ラシドが、久しぶりに『ペイル・ドゥ』と仕事ができると喜んでいたぞ」
「ペイル・ドゥ?」
天日は思わず聞き返した。
「なんだ、聞いてないのか。俺たちの界隈じゃあ、泣く子も黙る『ペイル・ドゥ』と言やあ、知る人ぞ知る有名人だぞ」
ボルトは得意げだった。
「そうなんですか」
「バル、余計なこと言わないでよ。昔の話よ」
マリィは気恥ずかしそうに、ぷいとそっぽを向いた。
ブラフマナスパティ社へ来る以前のマリィについて、天日は詳しく聞いたことがなかった。まさか、そんな異名を持つ人物が自分の上司だったとは――素直に驚いた。
「とにかく――ラシドのチームが手を貸してくれるのは、ありがたいわ。まずは課題の洗い出しから始めてみる」
「……とまあ、そんな具合だ。各々、よろしく頼む。敵さんがいつ仕掛けてくるか分からん。適宜進捗を共有しながら進めよう」
ボルトの言葉で、会議は自然と閉じかけていた。
だが天日は、ずっと胸の内で温めていたことを、ここで切り出した。
「ボルト大佐、あの――お願いがあるのですが。僕に、戦い方を教えてくれませんか」
「戦い方? ディマンドのことなら、気にする必要はないぞ」
それもあった。だが天日の脳裏にあったのは、あの屋台街の光景だった。男たちに取り囲まれ、何もできぬまま地面に押さえつけられた、あの無力。
「そうよ」
マリィが心配そうに天日を見ている。
「勝手なお願いだとは、分かっています。ですが、いざという時に何もできないのは――」
天日が見上げると、ボルト大佐は眉を寄せ、天井を仰いだ。
数秒の逡巡のあと、両手を広げて、お手上げだという仕草をしてみせる。
「分かった、分かったよ。そんな目で見るな。――シモン、時間のある時でいい、天日に稽古をつけてやれ。護身程度の格闘術と、銃の撃ち方を教えてやってくれ」
溜息まじりの指示だった。
「シモンさん、お願いします」
天日はすかさず頭を下げた。
ところがシモンは、天日には目もくれず、困惑したような面持ちでボルト大佐を見た。
「自分が……でしょうか」
露骨な拒絶だった。ただ嫌だ、というだけではない。何かを抱え込んだ、もっと複雑なものが、その表情には滲んでいた。
「そうだ」
ボルト大佐の声は、わずかに強引だった。
シモンが口をつむぐ。
「シモン……」
セイヴが、心配そうに声を掛けた。シモンは目を伏せ、床の一点をじっと見つめている。
室内の空気が、変わった。誰もが何かを察し、それぞれに言葉を呑み込んでいる。
わずかな静寂の後、シモンが口を開いた。
「自分は……ヴィタルマナを、憎んでいます。だから自分は、適任ではありません」
その視線の先には、天日がいた。
*
シモン=ナガンは、生まれてまもなく中東リージョンへ移り住んだ。
父の仕事の都合だった。
シモンの父は当時、しがない舞台役者にすぎなかったが、映画監督であったセイヴ=ガーリエルの父が、たまたま渡航先で彼の芝居を目にし、その才能に惚れ込んだ。
出演のオファーが届いた時、シモンはまだ乳飲み子だった。この千載一遇の機会を、どうしても掴みたかった父は、妻と相談を重ねた末、撮影現場のある中東リージョンへの移住を決めた。
結果は、期待をはるかに上回るものだった。シモンの父はセイヴの父の眼に違わぬ見事な演技で名を馳せ、二人はその後も度々組んでは、作品を重ねていった。
シモンとセイヴは、そんな父親たちに連れられて、よく一緒に遊んだ。
歳が近いこともあり、まるで本当の兄弟のように育った。子供ながらに父親たちの映画が好きで、とりわけシモンの父が主演を務めたスパイ映画の真似事を、飽きもせず繰り返した。
だが、ある日――突然の悲劇が、彼らを襲った。
西暦二一三八年。ヴィタルマナによる、中東リージョンテロ事件。あろうことかそれは、彼らが家族で訪れていた映画祭の会場のある観光区で、勃発したのだった。
*
「カトリーヌ、シモンを連れて、ハンスさんのところへ行くんだ!」
シモンの父は、正義感の強い男だった。
目の前で銃を乱射するヴィタルマナに組みつくと、振り返りもせず、そう叫んだ。それはまるで、あのスパイ映画そのものだった。
その父の姿を、シモンは今でも、はっきりと覚えている。
「パパ! パパ――!」
五歳のシモンは母の手に引かれ、泣きながら走った。何度も振り返り、何度も父の名を呼んだ。
ようやく建物の陰へ逃げ込んだ、その時とき――鈍い銃声が響いた。
父の呻き声が聞こえ、母の足がぴたりと止まった。見上げると、母の瞳から、涙がこぼれ落ちていた。
子供ながらに、シモンは父が死んだのだと悟った。
初めて知る感情だった。足がすくみ、その場にしゃがみ込む。心が錯乱し、意識を失うほど泣きじゃくった。
その後、自分がどうやって助かったのか――シモンは覚えていない。
気がつくと、一人の若い軍人に抱えられていた。
母とともにセイヴたちのもとへ辿り着いた時、シモンはすでに気を失っており、母の背中には、三発の銃痕が刻まれていた。
セイヴと彼の父が駆け寄ると、シモンの母は、安堵したようにその場へ崩れ落ちた。
「この子を……どうか……お願いします」
最期にそう言い残し、セイヴの両親へシモンを託して、絶命した。
彼らは、せめてその想いが伝わるようにと、何度も、何度も大きく頷いた。
それからシモンは、セイヴの家族に連れられ、シェルターへと避難した。
*
数百人ものヴィタルマナによる、一斉蜂起。
いくつもの施設が占拠され、抵抗したオリジンは容赦なく制裁を受けた。
軍と警察が鎮圧するまでのあいだに、死傷者はおよそ二千人にのぼった。
シモンはその後、ガーリエル家に引き取られた。
だが、あの日のことを片時も忘れることはなかった。物心がつき、大人になるにつれて、ヴィタルマナへの憎しみは、心の奥深くへと根を張っていった。
セイヴは、そんなシモンの気持ちを理解し、本当の兄として、常に寄り添い続けた。
その憎しみに共感し、辛さを分かち合った。しかし同時に――憎むべきはヴィタルマナという存在ではなく、テロという行為そのものなのだと、徹底して説き続けた。
それは、セイヴの父の教えでもあった。
映画監督であったセイヴの父は、社会風刺や歴史的事件を好んで題材にしたが、異なる価値観や背景への敬意を決して忘れず、偏った描写に陥らぬよう、常に心を砕いていた。
そうした父の背中こそが、セイヴという人間を形づくっていた。
シモンがその憎しみを誤った方向へ向けずに済んだのは、ひとえにセイヴの存在によるところが大きかった。
「シモン、俺と一緒に、軍へ入ろう」
シモンが十四歳の誕生日を迎えた日、セイヴはそう言った。決して消えることのないシモンの瞋恚の炎に、正しい意義を与えてやりたかったのだ。
「セイヴも、入るの?」
聞き返すシモンに、セイヴは静かに頷いた。
幼い頃、セイヴにも、映画監督の父や役者の母のようになりたいと願った時期があった。だがこの頃にはもう、とりたててやりたいことなど、なくなっていた。
セイヴには、我欲というものがなかった。家族に恵まれ、友に恵まれ、才にも恵まれた――その人生観は、若くしてすでに成熟しきっていた。
セイヴにとって生きるということは、何かを探し求める旅ではなく、流水に漂う一枚の落ち葉のように、ただ運命へ身を委ねることだった。
シモンのためでも、テロのためでもない。――軍人になることは、彼にとって、そういう意味での必然だった。
たいていの仕事は、責任能力さえ担保できれば何歳からでも始められるが、いくつかの専門職には年齢制限がある。軍人は、十八歳以上と定められていた。
セイヴは十八歳になると、すぐさま入隊した。自分が先に道を歩むことで、シモンの道標になれると考えたのだ。
いざ入ってみれば、現実は想像以上だった。
大半の軍人にとって、訓練とは、うまい酒を飲むための前菜にすぎなかった。臨場感のかけらもない机上の作戦で高得点を取っては悦に入る連中を横目に、セイヴは二年の歳月を過ごした。――シモンの入隊を、ただ待ちながら。
ある日、声を掛けられた。
「俺の部隊に来ないか」
名乗ったのは、バレンチノ=ボルト。
当時は少佐で――あの日、シモンとシモンの母を抱え、セイヴたちのもとへ駆け込んできた、あの若い軍人だった。セイヴは一目で、それと判った。
「少佐。自分は、軍の現状に不満があります」
セイヴは率直に告げた。シモンを説き伏せ、いっそ二人で警察へ転じることすら考えていた、まさにその矢先だった。
「気が合うな」
ボルトは笑った。
「少佐は――なぜ、軍人を続けているのですか」
「俺は十二年前、あのテロの現場にいた。あの頃はお前よりもずっと新米でな、右も左も分からんまま、ただ駆けずり回ることしかできなかった。大勢の人間が、目の前で死んでいったよ。――あんなのはもう、まっぴらだ」
セイヴを見るボルトの目は、焦点が定まらず、どこか遠くの何かを見つめているようだった。
「世界連合統一国になって、外務は事実上なくなった。軍と警察を統合するなんて話も、耳に入ってくる。それならそれで、俺は構わん。だがな――いつか、争いは必ず起きる。内戦だろうとテロだろうと、必ずだ。その時、ちゃんと役に立つ人間を、俺は集めている。お前みたいな、な」
セイヴは、不意に涙をこぼした。
これまで、どこか他者とのあいだに一線を引いて生きてきた自分が、この時ばかりは、心を開いていた。
あの日の子供が自分であることをボルトへ打ち明け、もうすぐ入隊するであろうシモンのことも、すべて語った。
ボルトは、シモンもまた自分の隊へ迎え入れると、固く約束した。
*
シモンの視線が、天日を射抜いていた。
天日は、その瞳を正面から受け止めた。この交わった一筋の視線だけが、シモンとの関係をかろうじて繋ぎとめる、細い糸のように思えた。手放せば、二度と結び直せない。――天日はそれを手放すまいと、ただ黙って立ち続けた。
セイヴがゆっくりとシモンへ歩み寄り、その隣に並んだ。大きな掌が、そっとシモンの背に触れる。
「シモン。お前の気持ちは、解っている。大佐もだ。だがなあ、シモン――俺たちはテロから人々を守るために、軍へ入ったんじゃなかったのか。それとも、お前は違うのか」
諭すような、やわらかい声だった。
天日は、二人のあいだに流れるものの正体を、言葉にまとわりつく空気の温度から、おぼろげに察した。それは憎しみでも、断罪でもなかった。長い歳月をかけて、ただ一人の弟のために紡がれてきた、不器用な祈りのようなものだった。
シモンは何か言いかけて口を開いたが、言葉が見つからなかったのか、再びそれを閉じた。
「天日は――お前の敵なのか」
セイヴの不意の問いに、天日の心臓が小さく跳ねた。思わず、唾を呑み込む。
シモンは、ゆっくりと首を横に振った。
「……了解した」
短くそう言うと、シモンはボルトへ向き直り、敬礼した。
ボルトは、心地よい風が吹き抜けたように目を細め、静かに微笑んだ。




