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夏祭りの金魚

作者:横田 真
最終エピソード掲載日:2026/08/29
「八時に、いつもの駐輪場だからね」

 母はそう言った。ぼくは「わかってる」と答えた。
 聞いていなかった。

 二〇〇一年、七月。小学四年生のぼくは、生まれて初めて、
 親なしで夏祭りに行った。
 三千円と、四人の友達と、二日間だけ歩行者天国になる県道。

 誘ったのは友達だった。ぼくは「まあ……行けたらだけど」と答えた。
 行きたくてたまらなかったのに、そう言った。

 金魚すくいは、一匹もすくえなかった。
 屋台のおじさんが、袋に一匹だけ入れて、持ってきな、と言った。
 その袋を提げて、待ち合わせの場所へ向かった。
 ――駅の、反対側の出口へ。

 二十五年前の、たった一日の話です。
 その日もらった金魚は、二十二年生きました。
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