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王立劇場で十二年間、名無しの代役でしたが、外れ役紋【空白】で旅一座を始めます~訳あり役者の舞台は今日も満員です~

作者:やまご
最新エピソード掲載日:2026/08/29
王立劇場で十二年間、リヴィアは誰かが倒れたときだけ舞台に立つ「名前のない代役」として働いてきた。

彼女に与えられた役紋は、何も刻まれていない外れの【空白】。どんな役にも一晩だけ合わせられるため便利に使われてきたが、ポスターに名前は載らず、どれほど完璧に演じても、拍手は看板女優のものだった。

記念公演を代役として救った夜、支配人から告げられたのは感謝ではない。

「代役に名前はいらない。お前の代わりもいる」

その言葉を聞いたリヴィアは、十二年間勤めた王立劇場へ静かに辞表を置いた。

劇場の外で彼女を待っていたのは、人前でうまく話せない脚本家ノア。

「今度は、あなたの名前を台本に書かせてください」

彼が率いる旅一座〈青い天幕〉に残されていたのは、穴の開いた天幕、古びた舞台馬車、たった三脚の客席。そして、有効期限まで九十日しかない巡業札だった。

一座を存続させるには、七つの町で客席を満員にしなければならない。

耳の聞こえない影絵師の少女、喜劇の才能に気づいていない元歌姫、英雄と呼ばれることを嫌う片脚の元工兵――。

行く先々で訳ありの仲間を迎えながら、リヴィアたちは、その町の人々が本当に見たい物語を舞台にしていく。

やがて判明するのは、【空白】が誰かの役を借りるだけの外れ役紋ではないということ。

仲間と観客の心が重なったとき、この世界にまだ存在しない「新しい役」を生み出せる、特別な役紋だった。

これは、誰かの代わりにしかなれなかった女性が、自分の名前で拍手を受け、帰る場所と演じたい役を見つけるまでの物語。

なお、彼女を失って初めてその価値に気づいた王立劇場から、どれほど好条件で戻ってほしいと言われても――もう遅い。

彼女の幕は、新しい仲間たちと共に上がったのだから。

※全50話・第1部完結予定。
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