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昔話を今語る

作者:多幸
最新エピソード掲載日:2026/10/25
昔々、あるところに。

亀を助けた浦島太郎がいました。

鬼を退治した桃太郎がいました。

恩返しをした鶴がいました。

そんな誰もが知る昔話。

しかし、その物語には、語られることのなかった真実がありました。

――昔話とは、宝具の存在を隠すために語り継がれた物語だったのです。

そして、今々、あるところに。

一人の男がいました。

名前は阿倍野浩二。

仕事が嫌いで、面倒事が嫌いで、できることなら何もせずに暮らしたい男です。

そんな男が、ある日、釣りの最中に一匹の亀と出会いました。

亀から渡されたのは、薄汚れた箱。

その名も《玉手箱》。

捨てても捨てても戻ってくる、奇妙な箱でした。

ところが、その箱をネットに出品したところ、なんと一億円の値がついてしまいます。

これで一生遊んで暮らせる。

そう思った阿倍野でしたが、彼の前に、自らを選ばれた英雄と名乗る男が現れました。

《きびだんご》を操る、現代の桃太郎です。

さらに、鶴に変身するドジな女や、赤いエプロンを着た大男まで現れて――。

どうやら、この世界には昔話に登場する不思議な道具が、今も存在しているようです。

宝具を集める者。

宝具を奪う者。

宝具に選ばれた者。

それぞれの思惑が交錯する中、阿倍野が望むものは、ただ一つ。

「一億円もらって、仕事辞めてぇ」

英雄になりたいわけでも、世界を救いたいわけでもありません。

そもそも、昔話の真実になんて興味がないのです。

これは、昔話の宝具に選ばれた者たちが繰り広げる、少しおかしな現代の御伽噺。

今語ろうじゃないか

めでたし、めでたし。

――で、終わればよかったのですが。
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