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石蕗(上)

作者:鳴海彩世
最新エピソード掲載日:2026/10/21
物語は鬼庭村の少年・国次郎が風読術を学ぶ場面から始まる。鬼庭家には「力は守るべき者のために」という掟が受け継がれており、この精神が後の鬼庭家の礎となる。やがて時代は移り、鬼庭良直は父・元実とともに天文の乱に直面する。圧倒的不利な情勢の中、良直は軍略と交渉によって蘆名盛氏を味方へ引き込み、伊達晴宗方を勝利へ導く。これによって鬼庭家は伊達家中で大きな信頼を得る。
その後、良直は伊達輝宗に仕え、武だけでなく政務や評定でも重用されるようになる。輝宗は良直の才覚と人格を深く信頼し、良直もまた主君への忠義を生涯の信念としていく。
やがて政宗の時代となり、小手森城なで斬りや畠山義継事件など奥州は激動の時代を迎える。輝宗が義継に拉致され、自ら「撃て」と命じて命を落としたことで、政宗は深い悲しみと怒りに包まれる。良直は暴走しかねない若き政宗を支えながら、家臣団をまとめ、伊達家存続のため知略を尽くす。小十郎や成実ら若い世代もまた、この中で成長していく。
人取橋合戦では、三万を超える佐竹連合軍に対し、良直は四面埋伏の陣を献策。自らも七十三歳の老躯を押して出陣し、六十余名の老兵とともに殿軍を務める。人取橋に立ちはだかった左月斎らは圧倒的な敵軍を足止めし、政宗軍の撤退を成功させる。最後は磐城の窪田十郎との一騎討ちの末に討たれるが、その時間稼ぎと生前から張り巡らせていた策によって伊達家は滅亡を免れる。
良直は死してなお伊達を救い、その遺志は嫡男・綱元へ託される。ツワブキの花が静かに咲く庭を残し、鬼庭左月斎良直は伝説となった。
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