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はじまりの音

作者:Randa
最新エピソード掲載日:2026/09/01
高校時代、ハードロック好きのギター少年だった多田野景、18歳。

高校最後の春、生まれて初めて生のオーケストラを聴いた彼は、その圧倒的な音に心を奪われた。

そして大学進学を機に、東京・高田馬場へ。

「せっかくなら、今度は自分があの中に入ってみたい」

そんな軽い気持ちで、大学の管弦楽団に入団する。

担当は――ヴァイオリン。

当然、経験はゼロ。

待っていたのは、想像した華やかなオーケストラ生活とは程遠い、地味で過酷な基礎練習の日々だった。

何度弾いても綺麗な音が出ない。
曲を弾けるようになる気配もない。

「……これ、俺が思ってた大学生活と違わないか?」

何度も辞めようと思う景。

それでも彼が楽器を置かなかったのは、一緒に入団した仲間たちと過ごす時間が、いつの間にか大切になっていたからだった。

同期の初心者チェロ奏者、大野桜子。

少し地味だけど、笑うと不思議なほど魅力的な彼女は、なぜか景に思わせぶりな態度を見せてくる。

そして景が憧れる、2歳年上のフルート奏者、中野メグミ。

柔らかな茶髪に華やかな美貌。
ふんわりとした大人の雰囲気を持つ、景にとって眩しい存在だ。

さらに、同じ農学部で隣の部屋に住む親友・大森崇。

彼は桜子に淡い想いを抱き始めていた。

大学生活。
音楽。
友情。
そして、まだ誰も答えを知らない恋。

昨日まで弾けなかった音が、今日は少しだけ鳴る。

昨日まで知らなかった感情が、少しずつ胸の中で形になっていく。

これは、名古屋から東京へ出てきた18歳の青年が、初心者からヴァイオリニストへと成長しながら、仲間たちと過ごす四年間の青春物語。

――あの春、僕らはまだ、自分たちの未来を知らなかった。
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