七曜の花嫁 ~嫁いだ六人は、すべて幸せであつた~
最終エピソード掲載日:2026/08/23
六人ぶんの「幸せ」は、同じ筆で、あとから書かれている。
大正の末。山が鳴りはじめると、七久里村は御名山へ花嫁を送る。
十七のあさに渡されたのは、『七久里花嫁帳』と呼ばれる冊子だった。
輿入れまでの七日間、一日にひとりぶん。これまでに嫁いだ六人の花嫁の記録を読むことを、花嫁だけが許される。
月の花嫁は、ひとことも問わなかった。だからよき花嫁だった。
火の花嫁は、神を怒らせ、社ごと焼かれた。
水の花嫁は、村を救うため、みづから沈んだ。
――どの頁の末尾にも、同じ一行が書き足されている。「幸せであつた」と。
太い筆で。濃い墨で。五人ぶん、まとめて。
墓石だけが消えた初代。焼かれた墓石。真新しい堰。温かい御神木。
余白に残された、消し忘れの走り書き。
そして白紙のまま綴じられた六人目の頁は、三年前に山から帰り、それきり口をきかない姉のものだった。
七日目。あさは自分の頁に、たった一行を書く。
「わたくしは、なをききます」
大正末を舞台にした和風あやかし。全十四話、完結まで書き上げ済み。
大正の末。山が鳴りはじめると、七久里村は御名山へ花嫁を送る。
十七のあさに渡されたのは、『七久里花嫁帳』と呼ばれる冊子だった。
輿入れまでの七日間、一日にひとりぶん。これまでに嫁いだ六人の花嫁の記録を読むことを、花嫁だけが許される。
月の花嫁は、ひとことも問わなかった。だからよき花嫁だった。
火の花嫁は、神を怒らせ、社ごと焼かれた。
水の花嫁は、村を救うため、みづから沈んだ。
――どの頁の末尾にも、同じ一行が書き足されている。「幸せであつた」と。
太い筆で。濃い墨で。五人ぶん、まとめて。
墓石だけが消えた初代。焼かれた墓石。真新しい堰。温かい御神木。
余白に残された、消し忘れの走り書き。
そして白紙のまま綴じられた六人目の頁は、三年前に山から帰り、それきり口をきかない姉のものだった。
七日目。あさは自分の頁に、たった一行を書く。
「わたくしは、なをききます」
大正末を舞台にした和風あやかし。全十四話、完結まで書き上げ済み。
第一章 記録
第一話 月の花嫁
2026/08/10 21:10
第二話 火の花嫁
2026/08/11 21:10
第三話 水の花嫁
2026/08/12 23:10
第四話 木の花嫁
2026/08/13 23:10
第五話 金の花嫁
2026/08/14 23:10
第六話 土の花嫁
2026/08/15 23:10
第七話 日の花嫁
2026/08/16 21:50
第二章 真実
第八話 月の花嫁
2026/08/17 21:10
第九話 火の花嫁
2026/08/18 21:10
第十話 水の花嫁
2026/08/19 21:10
第十一話 木の花嫁
2026/08/20 21:10
第十二話 金の花嫁
2026/08/21 21:10
第十三話 土の花嫁
2026/08/22 21:10
第十四話 日の花嫁
2026/08/23 21:10