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クビになった四十九歳の管制官、深夜の「帰り道案内」配信を始める ~迷宮で遭難したら、まず遭難を宣言してください。あなたは今夜、私の第一便です~

作者:ramune
最新エピソード掲載日:2026/08/20
十二年前、地方空港の滑走路の下に迷宮が現れた。

計器を狂わせる〈圏乱〉で空は閉じ、空港は廃港。管制塔に残って十二年、跡地の空を捌いてきた塔野徹(四十九歳)も、業務の自動化とともに職を失う。

二十四年、無事故。その経歴は、職業安定所の窓口で「何にお使いになれますか?」と首を傾げられた。

眠れない元夜勤の体で始めたのは、深夜配信「帰り道案内」。終電を逃した酔客を、声だけで家まで送る小さな番組である。同接十六人。

ある梅雨の晩、コメント欄に一行が流れる。

「琴浜の第八環からです。冗談抜きで、はぐれました。電池が三割です」

迷宮の通信は、深夜だけ〈夜窓〉が開く。ただし通るのはネットのデータだけ。緊急通報は繋がらず、会社の夜間窓口は録音案内、救助は朝まで来ない。

報せることはできるのに、応える声が、どこにもいない時間だった。

「まず、遭難を宣言してください。……はい。あなたは今夜、私の第一便です」

地図は知らない。だが、迷った人間を家に帰す手順なら、二十四年ぶん知っている。

現在地の固定。視認の復唱。電池と水の残量管理。手書きの短冊。そして出口の灯を確認したら、こう言うのだ――「第一便、着陸です」。

深夜にしか開かない生命線に、夜勤明けの看護師が、始発待ちのタクシー運転手が、古参の探索者が集まりはじめる。

無資格の誘導だと会社は警告し、有料の先導屋は「山は声じゃ守れん」と凄む。それでも今夜も、窓は開く。

管制圏を失った男が、地の底に新しい管制圏を作るまでの物語。
1. 最終便
2026/08/09 10:07
2. 第一便
2026/08/09 16:30
3. 短冊
2026/08/10 10:30
4. 保たせる
2026/08/10 19:30
5. 先導屋
2026/08/11 23:37
6. 貨物口
2026/08/12 08:30
7. 十二年物
2026/08/13 08:30
8. 昼
2026/08/14 08:30
9. 説明会
2026/08/15 11:06
10. 星穴
2026/08/16 13:15
11. 初回
2026/08/17 19:44
13. 十四歳
2026/08/19 11:46
14. 記録の人
2026/08/20 08:30
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