面倒なので黙っていたら天才参謀と誤解されました
最新エピソード掲載日:2026/04/16
後年、マルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。
諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。
だが、その大半は誤解である。
確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院主席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。
とはいえ本人に言わせれば、ただ試験の点が良かっただけで、戦場を切る直観も決断力も野心もない。
あるのは、人の話を最後まで聞く忍耐と、怒鳴られたくないという切実な願いだけだった。
会議で意見を求められれば、なるべく穏当なことを言う。
揉めそうな議題は、欄を分けて別の紙にする。
怒られそうな言葉は、怒られない言葉に替える。
それだけのことを繰り返していたはずなのに、味方からは「全体を見通す男」と持ち上げられ、敵国からは「法と兵站を操る若き参謀」と警戒され、歴史には「連邦を統べた沈黙の天才」と書かれていく。
これは、面倒を避けたいだけの青年が、誤解と制度と善意によって、だんだん歴史の中心へ押し上げられていく物語である。
※ハーメルン、カクヨムでも投稿しています。
諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。
だが、その大半は誤解である。
確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院主席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。
とはいえ本人に言わせれば、ただ試験の点が良かっただけで、戦場を切る直観も決断力も野心もない。
あるのは、人の話を最後まで聞く忍耐と、怒鳴られたくないという切実な願いだけだった。
会議で意見を求められれば、なるべく穏当なことを言う。
揉めそうな議題は、欄を分けて別の紙にする。
怒られそうな言葉は、怒られない言葉に替える。
それだけのことを繰り返していたはずなのに、味方からは「全体を見通す男」と持ち上げられ、敵国からは「法と兵站を操る若き参謀」と警戒され、歴史には「連邦を統べた沈黙の天才」と書かれていく。
これは、面倒を避けたいだけの青年が、誤解と制度と善意によって、だんだん歴史の中心へ押し上げられていく物語である。
※ハーメルン、カクヨムでも投稿しています。
プロローグ
2026/04/07 23:26
第一話 連邦の潤滑油
2026/04/07 23:27
第二話 名誉の欄と時刻表の欄
2026/04/07 23:27
第三話 これ試験勉強でやったところだ
2026/04/07 23:28
第四話 時間にならない勇気
2026/04/07 23:28
第五話 ハルトゥング少佐
2026/04/07 23:29
第六話 二枚綴り
2026/04/07 23:29
第七話 読んだ(理解したとは言っていない)
2026/04/07 23:29
第八話 誤読
2026/04/07 23:29
第九話 アウエンホーフの老伯
2026/04/07 23:30
第十話 夏季統合動員演習
2026/04/07 23:30
第十一話 総覧日の王女殿下
2026/04/07 23:30
第十二話 正しさの届き方
2026/04/07 23:31
第十三話 国境へ向かう列車
2026/04/07 23:31
第十四話 通告は守られない
2026/04/07 23:32
第十五話 サン・ルネの弔列
2026/04/07 23:32
第十六話 空位の四十日
2026/04/09 01:26
第十七話 ルサント継承戦争
2026/04/09 01:26
第十八話 昨日までの王国
2026/04/11 00:03
第十九話 請願なき保護
2026/04/12 17:19
第二十話 高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に現場の判断で対応してください
2026/04/16 00:41