森の薬師と、王女の帰る場所
最新エピソード掲載日:2026/06/02
名はリナ。
城壁都市の南端、豊かな森を中心に暮らす平民街で育った平民だ。
けれど、彼女には誰にも言えない秘密があった。
——魔力を持っている。
この国で魔力は、貴族だけに許された力だった。
平民に魔力があると知られれば、気味悪がられるか、最悪“回収”される。
だから祖父は、いつも小声で言った。
「絶対に、人前で使うな」
祖父のエドガーは、一人暮らしをしていた。
祖父はおそらく元貴族である。
理由は語らない。
ただ、若い頃に家を追われ、名を捨ててこの街に流れ着いたらしい。
夜になると、祖父は戸を閉め、蝋燭の灯りの中でだけ“勉強”を教えてくれた。
文字。
歴史。
貴族の礼儀。
そして——魔力。
「魔力は感情に呑まれる。怖がるな。流れを掴め」
祖父はそう言って、小さな灯火を空中に浮かべて見せた。
リナはそれを夢みたいだと思った。
けれど、彼女自身は不器用だった。
魔力を練ろうとしても熱が暴れ、すぐ倒れる。
「わたしには無理だよ」
「無理じゃない。お前は“器”が大きすぎるだけだ」
その意味を、リナは理解していなかった。
城壁都市の南端、豊かな森を中心に暮らす平民街で育った平民だ。
けれど、彼女には誰にも言えない秘密があった。
——魔力を持っている。
この国で魔力は、貴族だけに許された力だった。
平民に魔力があると知られれば、気味悪がられるか、最悪“回収”される。
だから祖父は、いつも小声で言った。
「絶対に、人前で使うな」
祖父のエドガーは、一人暮らしをしていた。
祖父はおそらく元貴族である。
理由は語らない。
ただ、若い頃に家を追われ、名を捨ててこの街に流れ着いたらしい。
夜になると、祖父は戸を閉め、蝋燭の灯りの中でだけ“勉強”を教えてくれた。
文字。
歴史。
貴族の礼儀。
そして——魔力。
「魔力は感情に呑まれる。怖がるな。流れを掴め」
祖父はそう言って、小さな灯火を空中に浮かべて見せた。
リナはそれを夢みたいだと思った。
けれど、彼女自身は不器用だった。
魔力を練ろうとしても熱が暴れ、すぐ倒れる。
「わたしには無理だよ」
「無理じゃない。お前は“器”が大きすぎるだけだ」
その意味を、リナは理解していなかった。