6.
リナは、少しだけ視線を落とした。
「……魔法のことは、知ってるよ」
ぽつりと呟く。
「おじいちゃんに教えてもらってるじゃない」
エドガーの手が止まる。
「そうだな」
短く答える。
リナは続ける。
「でも、今日のは……なにが違うの?」
エドガーは少しだけ沈黙したあと、言った。
「違う」
薬研の音が再び鳴る。
ごり、と一度強く。
「お前に教えた魔法は、“制御の仕方"だ」
「だが今日のは、“使い方の話”だ」
リナは眉をひそめる。
「使い方……?」
エドガーは視線を上げないまま続ける。
「誰が持つか、どこで使うか、誰に向けるか」
「それで“魔法”は毒にもなる」
テーブルに置いてあるランタンの光がエドガーの横顔をゆらゆらと照らしている
「黒蜘蛛草はただの毒じゃない」
エドガーの声がわずかに低くなる。
「黒蜘蛛草はただの毒じゃない」
エドガーの声がわずかに低くなる。
「本来なら、あれほど早く全身に回らない」
リナは瞬きをした。
「え?」
「誰かが手を加えた可能性がある」
薬研が止まる。
「魔法でな」
リナの呼吸が止まる。
「だから、大きな貴族が関わっていた可能性がある」
エドガーは淡々と続ける。
「あの襲撃は偶然ではない」
リナは思わず息を呑んだ。
「じゃあ……あの子は」
「狙われたのだ」
即答だった。
エドガーはそこで初めてリナを見る。
「だから、貴族には近づくなと言った」
その言葉は、さっきよりずっと現実的だった。




