『隣の席の彼女は、今日も高すぎる』
最新エピソード掲載日:2026/05/05
4月。
入学式の朝、勢多央《せた おう》は自分のクラスの席を確かめて、
思わず動きを止めた。
最後列の右端。自分の席のすぐ隣に、
座っていた。
葛城《かつらぎ》みお。
正確に言えば、まだ半分しか座っていなかった。
折り畳まれた長い脚を窮屈そうに収め、背中を極限まで縮め、
まるでそこに自分がいないかのように、小さく、小さく、息を潜めていた。
けれど、どうしても隠しきれないものがある。
圧倒的な、高さ。
会話らしい会話もなく、最初の日は終わった。
二日目も、三日目も、大して変わらない。
ただ、少しずつ。
「……少し見えにくかったら、ごめんなさい」
「あ、いや。俺も似たようなもんだから」
そんな一言が積み重なっていく。
教科書の端が触れた、次の授業は何だっけ、図書委員が同じだった。
ありふれた偶然が、糸のようにつながっていく。
恋には、まだ遠い。
でも、何かが、少しずつ近づいている。
――勢多には、まだ知らないことがある。
みおの本当の身長のこと。
みおの家族のこと。
みおが今日も、背を縮めながら電車に乗っていること。
――みおにも、まだ知らないことがある。
隣の彼が、こっそり早起きをしていること。
腕時計を撫でるのが、緊張のサインだということ。
そして彼が、背の高い女の子に憧れていた、ということ。
高校生たちの日常を、ゆっくりと。
急がず、焦らず、少しずつ近づいていく物語。
入学式の朝、勢多央《せた おう》は自分のクラスの席を確かめて、
思わず動きを止めた。
最後列の右端。自分の席のすぐ隣に、
座っていた。
葛城《かつらぎ》みお。
正確に言えば、まだ半分しか座っていなかった。
折り畳まれた長い脚を窮屈そうに収め、背中を極限まで縮め、
まるでそこに自分がいないかのように、小さく、小さく、息を潜めていた。
けれど、どうしても隠しきれないものがある。
圧倒的な、高さ。
会話らしい会話もなく、最初の日は終わった。
二日目も、三日目も、大して変わらない。
ただ、少しずつ。
「……少し見えにくかったら、ごめんなさい」
「あ、いや。俺も似たようなもんだから」
そんな一言が積み重なっていく。
教科書の端が触れた、次の授業は何だっけ、図書委員が同じだった。
ありふれた偶然が、糸のようにつながっていく。
恋には、まだ遠い。
でも、何かが、少しずつ近づいている。
――勢多には、まだ知らないことがある。
みおの本当の身長のこと。
みおの家族のこと。
みおが今日も、背を縮めながら電車に乗っていること。
――みおにも、まだ知らないことがある。
隣の彼が、こっそり早起きをしていること。
腕時計を撫でるのが、緊張のサインだということ。
そして彼が、背の高い女の子に憧れていた、ということ。
高校生たちの日常を、ゆっくりと。
急がず、焦らず、少しずつ近づいていく物語。
第一話 4月7日 入学式と、最後列の隣
2026/04/22 13:00
第二話 4月7日 入学式と、わたしの座り方
2026/04/23 13:00
第三話 4月8日 気軽に、の正体
2026/04/24 13:00
第四話 4月10日 居場所の見つけ方
2026/04/25 13:00
第五話 4月15日 測れないもの
2026/04/26 13:00
第六話 4月24日 図書室の住人たち
2026/04/27 13:00
第七話 4月25日 休みの前の、なんとなく
2026/04/28 13:00
第八話 5月4日 私服と、知らない顔
2026/04/29 13:00
第九話 5月4日 光の続き
2026/04/30 13:00
第十話 5月8日 得意と苦手と
2026/05/01 13:00
第十一話 5月22日 答案の裏側
2026/05/02 13:00
第十二話 6月1日 贈るものの選び方
2026/05/03 13:00
第十三話 6月3日 十六番目の朝
2026/05/04 13:00
第十四話 6月14日 白い袖と、知らない人
2026/05/05 13:00