『隣の席の彼女は、今日も高すぎる』
最新エピソード掲載日:2026/06/23
4月。
入学式の朝、勢多央《せた おう》は自分のクラスの席を確かめて、
思わず動きを止めた。
最後列の右端。自分の席のすぐ隣に、
座っていた。
葛城《かつらぎ》みお。
正確に言えば、まだ半分しか座っていなかった。
折り畳まれた長い脚を窮屈そうに収め、背中を極限まで縮め、
まるでそこに自分がいないかのように、小さく、小さく、息を潜めていた。
けれど、どうしても隠しきれないものがある。
圧倒的な、高さ。
会話らしい会話もなく、最初の日は終わった。
二日目も、三日目も、大して変わらない。
ただ、少しずつ。
「……少し見えにくかったら、ごめんなさい」
「あ、いや。俺も似たようなもんだから」
そんな一言が積み重なっていく。
教科書の端が触れた、次の授業は何だっけ、図書委員が同じだった。
ありふれた偶然が、糸のようにつながっていく。
恋には、まだ遠い。
でも、何かが、少しずつ近づいている。
――勢多には、まだ知らないことがある。
みおの本当の身長のこと。
みおの家族のこと。
みおが今日も、背を縮めながら電車に乗っていること。
――みおにも、まだ知らないことがある。
隣の彼が、こっそり早起きをしていること。
腕時計を撫でるのが、緊張のサインだということ。
そして彼が、背の高い女の子に憧れていた、ということ。
高校生たちの日常を、ゆっくりと。
急がず、焦らず、少しずつ近づいていく物語。
※『カクヨム』でも同時掲載しています。
入学式の朝、勢多央《せた おう》は自分のクラスの席を確かめて、
思わず動きを止めた。
最後列の右端。自分の席のすぐ隣に、
座っていた。
葛城《かつらぎ》みお。
正確に言えば、まだ半分しか座っていなかった。
折り畳まれた長い脚を窮屈そうに収め、背中を極限まで縮め、
まるでそこに自分がいないかのように、小さく、小さく、息を潜めていた。
けれど、どうしても隠しきれないものがある。
圧倒的な、高さ。
会話らしい会話もなく、最初の日は終わった。
二日目も、三日目も、大して変わらない。
ただ、少しずつ。
「……少し見えにくかったら、ごめんなさい」
「あ、いや。俺も似たようなもんだから」
そんな一言が積み重なっていく。
教科書の端が触れた、次の授業は何だっけ、図書委員が同じだった。
ありふれた偶然が、糸のようにつながっていく。
恋には、まだ遠い。
でも、何かが、少しずつ近づいている。
――勢多には、まだ知らないことがある。
みおの本当の身長のこと。
みおの家族のこと。
みおが今日も、背を縮めながら電車に乗っていること。
――みおにも、まだ知らないことがある。
隣の彼が、こっそり早起きをしていること。
腕時計を撫でるのが、緊張のサインだということ。
そして彼が、背の高い女の子に憧れていた、ということ。
高校生たちの日常を、ゆっくりと。
急がず、焦らず、少しずつ近づいていく物語。
※『カクヨム』でも同時掲載しています。
~一年生~
第一話 4月7日 入学式と、最後列の隣
2026/04/22 13:00
第二話 4月7日 入学式と、わたしの座り方
2026/04/23 13:00
第三話 4月8日 気軽に、の正体
2026/04/24 13:00
第四話 4月10日 居場所の見つけ方
2026/04/25 13:00
第五話 4月15日 測れないもの
2026/04/26 13:00
第六話 4月24日 図書室の住人たち
2026/04/27 13:00
第七話 4月25日 休みの前の、なんとなく
2026/04/28 13:00
第八話 5月4日 私服と、知らない顔
2026/04/29 13:00
第九話 5月4日 光の続き
2026/04/30 13:00
第十話 5月8日 得意と苦手と
2026/05/01 13:00
第十一話 5月22日 答案の裏側
2026/05/02 13:00
第十二話 6月1日 贈るものの選び方
2026/05/03 13:00
第十三話 6月3日 十六番目の朝
2026/05/04 13:00
第十四話 6月14日 白い袖と、知らない人
2026/05/05 13:00
第十五話 6月25日 傘、ひとつ分の距離
2026/05/06 13:00
第十六話 7月7日 短冊に、書けないこと
2026/05/07 13:00
第十七話 7月14日 全力と、不器用と
2026/05/08 13:00
第十八話 7月18日 夏の、手前で
2026/05/09 13:00
第十九話 8月2日 夏休みの、それぞれ
2026/05/10 13:00
第二十話 8月15日 知らない町と、知ってる横顔
2026/05/11 13:00
第二十一話 8月22日 火の粉と、気づいてしまった夜
2026/05/12 13:00
第二十二話 9月1日 夏の続きと、新学期
2026/05/13 13:00
第二十三話 9月14日 走るより、見ていたい
2026/05/14 13:00
第二十四話 10月9日 文化祭まで、あと少し
2026/05/15 13:00
第二十五話 10月22日 あとは当日を待つだけ
2026/05/16 13:00
第二十六話 10月23日 文化祭、はじまる
2026/05/17 13:00
第二十七話 10月23日 見ていた人
2026/05/18 13:00
第二十八話 10月24日 好きです
2026/05/19 13:00
第二十九話 10月24日 火のそばで、言えたこと
2026/05/20 13:00
第三十話 10月28日 伝わっていたこと
2026/05/21 13:00
第三十一話 10月30日 休日、ふたりで
2026/05/22 13:00
第三十二話 10月31日 仮装と、素の顔
2026/05/23 13:00
第三十三話 11月4日 旅立つ前に
2026/05/24 13:00
第三十四話 11月7日 京都で、ちゃんと考えた
2026/05/25 13:00
第三十五話 11月11日 帰ってきた人たち
2026/05/26 13:00
第三十六話 11月23日 いいです、が全部
2026/05/27 13:00
第三十七話 12月3日 教える人と、教わる人
2026/05/28 13:00
第三十八話 12月21日 予行演習、というやつ
2026/05/29 13:00
第三十九話 12月22日 プレゼントの行方
2026/05/30 13:00
第四十話 12月24日 きれいなもの、そばに
2026/05/31 13:00
第四十一話 12月24日 選んだもの、渡したもの
2026/06/01 13:00
第四十二話 12月31日 今年がゼロになる夜
2026/06/02 13:00
第四十三話 1月1日 それぞれの朝
2026/06/03 13:00
第四十四話 1月7日 今年も、よろしくお願いします
2026/06/04 13:00
第四十五話 1月8日 ただいまと、おかえり
2026/06/05 13:00
第四十六話 1月19日 兄と、少しだけ本当のこと
2026/06/06 13:00
第四十七話 2月14日 渡す人と、もらう人
2026/06/07 13:00
第四十八話 2月28日 今年も、この日に
2026/06/08 13:00
第四十九話 3月1日 学年で、一番あとに
2026/06/09 13:00
第五十話 3月9日 送り出す側と、送られる側
2026/06/10 13:00
第五十一話 3月14日 テストと、その先のこと
2026/06/11 13:00
第五十二話 3月20日 来年の春のこと
2026/06/12 13:00
第五十三話 3月26日 春休みの、それぞれ
2026/06/13 13:00
~二年生~
第五十四話 4月8日 また、新しい席から
2026/06/14 13:00
第五十五話 4月17日 5センチの秘密
2026/06/15 13:00
第五十六話 4月21日 先輩という呼ばれ方
2026/06/16 13:00
第五十七話 4月23日 まだ書けないこと
2026/06/17 13:00
第五十八話 5月3日 連休のそれぞれ
2026/06/18 13:00
第五十九話 5月8日 言葉になっている人
2026/06/19 13:00
第六十話 5月15日 教えることと、習うこと
2026/06/20 13:00
第六十一話 6月1日 去年の今日のこと
2026/06/21 13:00
第六十二話 6月3日 十七番目の朝
2026/06/22 13:00
第六十三話 6月12日 去年の梅雨は、こうじゃなかった
2026/06/23 13:00