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協力者の忠誠が重すぎる ~書類上は成果ゼロのスパイが引退したら、寝返らせた大物たちが喪主の座を奪い合ってきた~

作者:三条 解由
最新エピソード掲載日:2026/11/03
報告書の枚数は部でいちばん少なく、送別会もなく、受付には三年通っても名前を覚えてもらえなかった。
王国対外情報部の運用官ヒュー・アシュトン(47)は、書類の上では成果ゼロのまま、静かに引退した。

その翌朝、国境の向こうのいくつもの郵便局で、何年も預けられていた古い封筒が配達される。
――これが届いたなら、私はもう、ここにはいない。

二日後、王都郊外の隠れ家に、亡命者が押しかけてきた。
帝国の老将軍。連合の豪商。教国の魔導師。公国の天才暗号官。
彼が二十五年かけて寝返らせ、一度も切り捨てなかった協力者たちだ。
彼が死んだと思って、国も地位も捨ててきた。そして、口をそろえて言う。
「あの人以外とは話さない」

本人が玄関で「生きている」と言っても、話は止まらない。
喪主は誰が務めるか。いちばん古い協力者は誰か。どの暦で数えるか。
規程集を抱えた新人事務官ハティは、今日も議事録に書く。「論点:暦」。

警備計画を勝手に二十二頁作る将軍。葬儀場を前金で押さえてきた豪商。会った回数と、残した人参の数まで覚えている魔導師。千二百回、彼の死を推論した暗号官。
一方、それぞれの国の追手は、それぞれのやり方で彼らを取り戻しに来る。
原則として戦わない元スパイは、郵便と暦と、二十五年分の「覚えていること」で、それを迎え撃つ。

書類の上では成果ゼロの男が、本当は何をしてきたのか。
方向を間違えた激重感情と、職人たちの本気がぶつかる、異世界諜報群像劇。

※恋愛・ハーレムなし。猫はいます。
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