『み使いは黙って木を植える』 ――一億二千三百万人の夏
最終エピソード掲載日:2026/08/10
2026年、日本の総人口は約一億二千三百万人。数字だけなら1990年頃とほぼ同じだが、増加していた時代の日本と、少子高齢化によって縮小する現在では、その中身も社会の空気も大きく異なっていた。さらに地球温暖化と自然破壊が進み、東京では命に関わる酷暑と豪雨が日常になっている。
板橋区の団地で祖母と暮らす十五歳の相沢未来は、四十度に迫る暑さの夜、公園へ光が落ちるのを目撃する。駆けつけた未来が見たのは、光の翼を持つ一人のみ使いだった。
エルと名乗ったみ使いは、世界を一瞬で変える奇跡を起こさない。乾ききった土を掘り、一本ずつ木を植え、バケツで水を運び続ける。その姿がネットで拡散されると、小学生、高齢者、会社員、外国人家族など、一人また一人と活動へ参加するようになる。
やがて、長く花の消えていた公園の遊歩道は、十年ぶりにキバナコスモス、アカマンマ、ミントで埋め尽くされる。蝶や蜂が戻り、人々の笑い声も戻ってくる。
ところが、蚊や虫への苦情を受けた区役所は、遊歩道の草花をすべて伐採してしまう。翌朝、そこに残されていたのは、何も生えていない乾いた土と、殺風景な景色だけだった。
未来たちが怒り、ネットで区役所への非難が燃え上がるなか、エルは誰も責めない。刈られた草を集めて土へ戻し、再び黙って木を植え始める。
自然を守りたい人、虫を恐れる人、公園を管理する職員、注目を集めたい配信者。それぞれの事情と正義が衝突するなか、未来たちは気づいていく。地球を救うのは、み使いが起こす一度の奇跡ではない。失敗しても話し合い、何度刈られても植え直し、命と暮らしの両方を守る仕組みを作る人間の行動なのだ。
そして巨大台風が東京へ迫るとき、一本の苗木から始まった小さな活動が、町に住む人々の命を救うことになる。
これは、沸騰する地球へ降り立ったみ使いと、彼の背中を見て立ち上がった人々が、未来へ小さな森を残すまでの物語。
板橋区の団地で祖母と暮らす十五歳の相沢未来は、四十度に迫る暑さの夜、公園へ光が落ちるのを目撃する。駆けつけた未来が見たのは、光の翼を持つ一人のみ使いだった。
エルと名乗ったみ使いは、世界を一瞬で変える奇跡を起こさない。乾ききった土を掘り、一本ずつ木を植え、バケツで水を運び続ける。その姿がネットで拡散されると、小学生、高齢者、会社員、外国人家族など、一人また一人と活動へ参加するようになる。
やがて、長く花の消えていた公園の遊歩道は、十年ぶりにキバナコスモス、アカマンマ、ミントで埋め尽くされる。蝶や蜂が戻り、人々の笑い声も戻ってくる。
ところが、蚊や虫への苦情を受けた区役所は、遊歩道の草花をすべて伐採してしまう。翌朝、そこに残されていたのは、何も生えていない乾いた土と、殺風景な景色だけだった。
未来たちが怒り、ネットで区役所への非難が燃え上がるなか、エルは誰も責めない。刈られた草を集めて土へ戻し、再び黙って木を植え始める。
自然を守りたい人、虫を恐れる人、公園を管理する職員、注目を集めたい配信者。それぞれの事情と正義が衝突するなか、未来たちは気づいていく。地球を救うのは、み使いが起こす一度の奇跡ではない。失敗しても話し合い、何度刈られても植え直し、命と暮らしの両方を守る仕組みを作る人間の行動なのだ。
そして巨大台風が東京へ迫るとき、一本の苗木から始まった小さな活動が、町に住む人々の命を救うことになる。
これは、沸騰する地球へ降り立ったみ使いと、彼の背中を見て立ち上がった人々が、未来へ小さな森を残すまでの物語。
プロローグ 緊急事態発生
2026/08/10 07:09
プロローグ 地球がおこですよ
2026/08/10 07:40
第1話 四十度の空から降りてきた者
2026/08/10 07:45
第2話 み使いは奇跡を使わない
2026/08/10 14:11
第3話 一億二千三百万人の二つの国
2026/08/10 14:48
第4話 一本の木から始まった行列
2026/08/10 15:32
第5話 十年ぶりに咲いた遊歩道
2026/08/10 16:30
第6話 花を刈った朝
2026/08/10 16:37
第7話 正義の炎が人を焼く
2026/08/10 17:33
第8話 人間が選んだ森
2026/08/10 17:37
第9話 沸騰する東京
2026/08/10 21:39
第10話 み使いがいなくなった朝
2026/08/10 23:12