表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

注意欠陥多動性障害ADHDの終の棲家

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/06/01
夕暮れの窓辺に
そっと腰を下ろす

若かった日々は
遠い川の流れのように過ぎて

泣いた日も
笑った日も

今では同じように
柔らかな光をまとっている

庭の椿が咲き

湯のみから立つ湯気が揺れ

誰かの笑い声が
廊下の向こうから聞こえてくる

ここは豪邸ではない

思い出の詰まった故郷でもない

けれど

寒い夜に暖かく

具合の悪い朝に誰かがいて

「おはようございます」

と声をかけてくれる場所

それだけで

人はずいぶん救われる

終の棲家とは

人生の終着駅ではなく

最後にたどり着く

安心の港なのかもしれない

窓の向こうでは

今年も桜が咲く

来年も見られるだろうか

その次はどうだろう

そんなことを思いながら

今日という一日を

大切に抱きしめる

急がなくていい

競わなくていい

もう十分に歩いてきたのだから

夕焼けに染まる空を見上げ

私は静かに微笑む

ありがとう

ここまで生きてこられたことに

ありがとう

今日も誰かと同じ空を見られることに

そして

いつか訪れる夜を恐れず

穏やかな眠りにつけるよう

この小さな部屋で

私は今日も

春を待っている。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ