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夜の波紋は、坂の上まで届く ――尾道の古い家で、見えない客におせったいをする――

最新エピソード掲載日:2026/06/15
尾道の坂の上にある祖父母の家には、夕食には、誰のものでもない茶碗がひとつ置かれる。

大学卒業後、実家で暮らしていた渡壁悠は、母に命じられ、空き家となった祖父母の家を整理するために尾道へやって来る。売却するために片づけるだけのはずだったその家には、奇妙な気配があった。

夜になると、広島弁を話す猫の姿をした存在・バロンが現れる。居間での食事には、見えない客の分まで置かれる。祖母が続けていた「おせったい」は、ただの親切ではなかった。

庭石を壊してしまったことをきっかけに、悠は坂の町を守っていた古い印を傷つけたと知る。バロンと祓い師・館上涼佑に導かれ、悠は尾道の寺社を巡り、失われた寺、移された祠、海へ向かう祈りの線をたどっていく。

一方、空き家再生のアドバイザーである宮瀬美凪は、古い祈りをそのまま眠らせるのではなく、今を生きる人々が未来を創る町にするため、尾道の仕組みそのものを作り替えようとしていた。宮瀬にとって、それこそが「再生」だった。

祖父母の家を売却することは、その考えに賛同することでもある。けれど悠は、過去の人々の祈りや願いを、なかったことにはできないと思うようになる。

母に従って家を手放すのか。
それとも、これからも誰かを受け入れる家として残すのか。

瀬戸内の坂町を舞台に、空き家と祈りと見えない客をめぐる、現代怪異ファンタジーです。
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