戻すおつもりで手放したのですか?品物ではないのですけれど
最終エピソード掲載日:2026/07/27
離縁を告げたのは、夫ではありませんでした。
義母が書面を読み上げるあいだ、隣の部屋で椅子の鳴る音がしました。
扉の下に、影がありました。
それきり、その人は入ってきませんでした。
理由は、誰からも説明されませんでした。
いまわたくしは、北の港町で乾物と香辛料の目利きをしております。
袋の匂いと重さで、湿った荷を選り分ける仕事です。
港の人は、わたくしをブラントの奥様と呼びます。
違います、と言いそびれたまま、二年が過ぎました。
ひとつだけ、屋敷とつながったままのものがあります。
義母の膝の薬に使う草を、いまも春と秋に乾かしております。
頼まれてはおりません。
給金から代金を引いてもらって、船に乗せております。
そこへ、王都の紋章をつけた馬車が迎えに来ました。
夫は言います。
親族を黙らせるまでの二年だった。
待たせてすまなかった、と。
けれど、待っていろとは、一度も言われておりません。
この港には、二十歳年上の商人がおります。
わたくしの手を止めさせず、何も尋ねない人です。
決めるのはあなたです、としか言いません。
今年の薬草は、もう乾き上がりました。
札を書けば、あとは船に乗せるだけです。
その札に何と書くのか、わたくしはまだ決めておりません。
義母が書面を読み上げるあいだ、隣の部屋で椅子の鳴る音がしました。
扉の下に、影がありました。
それきり、その人は入ってきませんでした。
理由は、誰からも説明されませんでした。
いまわたくしは、北の港町で乾物と香辛料の目利きをしております。
袋の匂いと重さで、湿った荷を選り分ける仕事です。
港の人は、わたくしをブラントの奥様と呼びます。
違います、と言いそびれたまま、二年が過ぎました。
ひとつだけ、屋敷とつながったままのものがあります。
義母の膝の薬に使う草を、いまも春と秋に乾かしております。
頼まれてはおりません。
給金から代金を引いてもらって、船に乗せております。
そこへ、王都の紋章をつけた馬車が迎えに来ました。
夫は言います。
親族を黙らせるまでの二年だった。
待たせてすまなかった、と。
けれど、待っていろとは、一度も言われておりません。
この港には、二十歳年上の商人がおります。
わたくしの手を止めさせず、何も尋ねない人です。
決めるのはあなたです、としか言いません。
今年の薬草は、もう乾き上がりました。
札を書けば、あとは船に乗せるだけです。
その札に何と書くのか、わたくしはまだ決めておりません。
第1話 ブラントの奥様、と呼ばれて
2026/07/27 12:01
第2話 待たせてすまなかった、と手紙には書いてあった
2026/07/27 12:01
第3話 今年の分で、最後にいたします
2026/07/27 12:01
第4話 預けてあるつもりだった
2026/07/27 12:02
第5話 家政は誰にでもできます、と申しました
2026/07/27 12:02
第6話 説明されなかったことは、なかったことです
2026/07/27 12:02
第7話 品物ではないのに
2026/07/27 12:03
第8話 札を、一枚ずつ
2026/07/27 12:03
第9話 お迎えの馬車は、港の外で
2026/07/27 12:03
第10話 呼ばれたので
2026/07/27 12:03