表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

侍女が一人もついてこなかったと聞いて、あの人は笑ったそうです

最終エピソード掲載日:2026/07/10
離縁された朝、侍女は一人もついてこなかった。
それを聞いた元夫は、笑ったという。
荷物は革鞄がひとつだけだった。

五年間、エーデルは伯爵家の嫁として屋敷を回してきた。
帳簿をつけ、取引先を一軒ずつ歩き、使用人の薬まで管理する。
誰にも頼まれず、誰にも気づかれないまま。

持参金の少ない子爵令嬢への評価は、地味で気が利くだけの嫁。
義母には息子にふさわしくないと言われ続けた。
夫は妻の仕事を、五年間で一度も見なかった。

離縁の朝、エーデルは使用人の仕事着を干してから馬車に乗る。
見送りはない。
この屋敷での最後の仕事が、他人の洗濯物だった。

残された屋敷で、小さな異変が重なり始める。
肉屋が掛売りを断り、帳簿は誰にも読めない。
招待状の返事すら、もう書けない。

やがて使用人たちが、一人ずつ辞めていく。
その辞めた順番には、ある法則がある。
覚書の片隅に残された小さな花の印と、同じ順番で。

港町で帳簿の仕事を得たエーデルは、初めての月給を手にする。
五年間、自分のために一銭も使わなかった女が最初に買ったのは、銅貨数枚の木の櫛だった。

侍女がついてこなかった本当の理由を、あの人はまだ知らない。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ