協会は「実力不足」と発表した。俺の報告書には「装備の設計不良」と書いてある 〜ダンジョン災害調査官・十九年ぶんの記録が、英雄と呼ばれた男の墓を掘り返すまで〜
最新エピソード掲載日:2026/08/31
「本件は、探索者本人の実力不足による事故と判断されました。以上です」
協会の記者会見は、いつもこの一文で終わる。四十一件。全部そうだった。
綿貫修司、四十一歳。ダンジョン協会・災害調査室の調査官。十九年間、死亡事故の現場に入り、壊れた装備と残されたログから「何が起きたか」を復元し続けてきた。書いた報告書は四百通を超える。勧告が採用されたことは、一度もない。
三月、第七区画。二十二歳のE級探索者が死んだ。協会の発表は「無理な単独潜行」。
だが現場のロープは、**上から**切れていた。
下から引かれて切れたのなら、彼は逃げていたことになる。上からなら——彼は最後まで、誰かを引き上げようとしていたことになる。
遺族の前で、綿貫は言った。「彼は逃げていません」
その日から、協会は彼の部署を畳みにかかる。
力では何も変わらない。変わるのは、書類が一枚、正しく書き直されたときだけだ。
これは、誰にも読まれなかった報告書が、英雄と呼ばれた男の墓を掘り返すまでの記録。
* 全30話・毎日更新・完結まで書き上げ済み。
協会の記者会見は、いつもこの一文で終わる。四十一件。全部そうだった。
綿貫修司、四十一歳。ダンジョン協会・災害調査室の調査官。十九年間、死亡事故の現場に入り、壊れた装備と残されたログから「何が起きたか」を復元し続けてきた。書いた報告書は四百通を超える。勧告が採用されたことは、一度もない。
三月、第七区画。二十二歳のE級探索者が死んだ。協会の発表は「無理な単独潜行」。
だが現場のロープは、**上から**切れていた。
下から引かれて切れたのなら、彼は逃げていたことになる。上からなら——彼は最後まで、誰かを引き上げようとしていたことになる。
遺族の前で、綿貫は言った。「彼は逃げていません」
その日から、協会は彼の部署を畳みにかかる。
力では何も変わらない。変わるのは、書類が一枚、正しく書き直されたときだけだ。
これは、誰にも読まれなかった報告書が、英雄と呼ばれた男の墓を掘り返すまでの記録。
* 全30話・毎日更新・完結まで書き上げ済み。
第1話 上から切れたロープ
2026/08/30 06:45
第2話 所見なし
2026/08/30 06:45
第3話 生き残った男
2026/08/30 11:45
第4話 彼は逃げていません
2026/08/30 11:45
第5話 六時間
2026/08/30 16:45
第6話 一通目
2026/08/30 16:45
第7話 記者は八人
2026/08/30 19:45
第8話 九キロニュートン
2026/08/30 19:45
第9話 打った男
2026/08/30 21:45
第10話 対象外
2026/08/31 06:45
第11話 設計値は正しい
2026/08/31 11:45
第12話 打ち切り
2026/08/31 16:45
第13話 来ないでください
2026/08/31 19:45