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記録係の俺だけが、消えた世界を覚えている

作者:記録係
最新エピソード掲載日:2026/07/29
日本で目立たない事務職として働いていた神崎悠真は、ある日、剣と魔法の世界アルカ・レクシアへ転生する。

彼に与えられた天恵は、見聞きした出来事を文章として残すだけの最低等級能力《記録》。

剣も振るえない。魔法も使えない。傷も治せない。

誰からも役に立たない能力だと笑われる中、赤毛の斥候ノエルだけが、その力の価値を認めてくれた。

ノエルに誘われ、冒険者パーティー〈灰色の雲雀〉へ加わった悠真は、初めて自分の居場所を手に入れる。

しかし、ある夜。

世界を書き換える白い鐘が鳴り、ノエルは跡形もなく消えてしまう。

仲間たちは、最初からノエルなど存在しなかったと言う。

部屋も、持ち物も、出生の記録も消え、彼が生きていた証拠は何一つ残っていない。

ただし。

悠真の黒い手帳にだけは、ノエルの名前が残されていた。

《記録》の本当の力。

それは、世界から消された存在を、改変の外側へ残すこと。

悠真は誰にも覚えられていない人々の人生を記し、世界そのものを書き換える存在へ立ち向かう。

だが、消された者を記録するたびに、代償として悠真自身の記憶が失われていく。

故郷の景色。

母親の声。

自分が何者だったのか。

他人を忘れないために、自分自身を失っていく記録係は、それでも問い続ける。

誰にも覚えられなくなったとき、人は本当に消えてしまうのか。

そして、苦しみや悲しみを抱えた世界を、それでも残す価値はあるのか。
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