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母の影、僕の檻

作者:かおるこ
最新エピソード掲載日:2026/06/10
母は言った。

「好きにしなさい」

その言葉は自由のようでいて、
いつしか見えない鎖になった。

右へ行こうとすると、
母のため息が聞こえた。

左へ進もうとすると、
母の寂しそうな背中が見えた。

だから私は、
自分で選んだつもりで、
母が悲しまない道ばかり歩いてきた。

気づけば人生の地図には、
私の足跡よりも、
母の影が濃く刻まれていた。

檻はなかった。

鍵もなかった。

誰も私を閉じ込めてはいなかった。

それなのに私は、
長いあいだ出ることができなかった。

母を愛していたのか。

母を恐れていたのか。

その違いさえ分からないまま、
季節だけが過ぎていく。

けれどある日、
震える手で扉に触れた。

外の風は冷たかった。

失敗もあるだろう。
後悔もあるだろう。

それでも。

誰かの正解ではなく、
自分の間違いを選べる人生を、
私は生きてみたい。

振り返れば、
そこにはまだ母の影がある。

消えることはないのかもしれない。

それでも私は歩き出す。

影を背負ったまま。

愛と罪悪感の境界を越えて。

母の檻ではなく、
私の人生へ。
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