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殿下の真実の愛は、殿下の嘘を許しませんでした

最終エピソード掲載日:2026/07/19
殿下の外交を支えていたのは、退屈と呼ばれた婚約者だった。

外交書簡を書き、条約に注釈をつけ、蝋封を押す。
すべて殿下の名前で。
彼女自身の名前は、どこにも残らない。

ある夜の舞踏会で、殿下は宣言した。
真実の愛を見つけた、と。
百人の前で、婚約は終わる。

彼女は泣かなかった。
微笑んで、一つだけ尋ねた。
その恋人に、私のことを伝えましたか、と。

殿下は答えられなかった。

恋人は、婚約者がいたことを知らない。
婚約者はいないと、殿下は嘘をついていた。
真実の愛は、嘘の上に建っていた。

紹介できない存在。
それが二年間尽くした女への、殿下の扱いだった。
静かに去った彼女の不在が、殿下の世界を蝕み始める。

外交は崩れ、評判は消え、信用は剥がれ落ちる。
そして殿下の嘘に気づいた恋人が、ある決断を下す。

嘘で手に入れた恋は、どこから壊れるのか。
紹介すらできなかった相手に、すがる資格はあるのか。
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