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【完結】門出屋の親父

最新エピソード掲載日:2026/11/03
 小田急線経堂駅から農大通りを歩いて五分。細い路地を曲がった先に、えんじの暖簾がかかった居酒屋が一軒。

 カウンター七席に、四人掛けのテーブルが二つ。親父が一人で切り盛りする、こぢんまりとした店だ。

 メニューはない。その日仕入れた新鮮な魚や旬の野菜を、親父が気の向くままに料理する。

 親父は無愛想で、客の話にも気のない返事をするばかり。

 それなのに、不思議と客たちは悩みを打ち明ける。

 親父は答えを出さない。ただ料理を作り、酒を注ぐだけだ。

 それでも、店を出る頃には、なぜか少しだけ前を向いている。

 多分偶然なのだろう。

 だが、偶然も重なれば必然となる。

 口さがない常連客たちは、この店を「門出屋」と呼ぶという。

 その店の名は「居酒屋ユージ」。

 今夜も静かに営業中。

◇

人生の小さな門出を描く、心温まる連作短編集。
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