第八話 キス祭り
短く柔らかい竿の穂先が、激しく揺れた。
ユージは手慣れた様子で竿を立て、軽く合わせを入れる。
すると、ブルブルッと小気味よい振動が手元に伝わってきた。
小さな魚体からは想像もできないほどの、力強い引きだ。
口切れしないよう、慎重にリールを巻き上げる。
やがて、海面に銀白色の魚体が姿を現した。
俗に「海の女王」と呼ばれる魚。
そう、シロギスである。
「おっ、いい型だ」
肘叩き、とまではいかないが、二十センチを超える良型だ。
秋も深まり、東京湾のシロギスは、そろそろ深場へ落ち始める頃だ。
今日は市場が休みなので、ユージは空いた時間を使って趣味の釣りを楽しんでいた。
金沢八景から出た乗合船には、十人ほどの釣り客が乗っている。
「兄さん、また釣ったのかい?」
隣で竿を出していた年配の男が声をかけた。
「いやあ、今日はよく釣れるねえ」
「よく釣れるって、兄さんだけじゃないか。こっちはさっぱりだよ」
「そんなことねえだろ。ほら爺さん、当たってるぜ」
「おっ、本当だ!」
男が慌てて竿を立てた。
ユージは笑いながら、釣り上げたシロギスをクーラーボックスに収めた。
持参したクーラーボックスは、すでに満杯になりかけている。
「こりゃ、食い切れねえな」
ユージは嬉しそうにひとりごちてから、新しい餌を針につけ、再び仕掛けを海へ落とす。
釣り人という生き物は、釣れれば釣れるほど、やめられなくなるものらしい。
◇
小田急線経堂駅から農大通りを歩いて五分。細い路地を曲がった先に、えんじの暖簾がかかった居酒屋が一軒。
カウンター七席に、四人掛けのテーブルが二つ。親父が一人で切り盛りする、こぢんまりとした店だ。
メニューはない。その日仕入れた新鮮な魚や旬の野菜を、親父が気の向くままに料理する。
親父は無愛想で、客の話にも気のない返事をするばかり。
それなのに、不思議と客たちは悩みを打ち明ける。
親父は答えを出さない。ただ料理を作り、酒を注ぐだけだ。
それでも、店を出る頃には、なぜか少しだけ前を向いている。
多分偶然なのだろう。
だが、偶然も重なれば必然となる。
口さがない常連客たちは、この店を「門出屋」と呼ぶという。
その店の名は「居酒屋ユージ」。
今夜も静かに営業中。
……のはずだった。
◇
店の厨房には、銀白色のシロギスがずらりと並んでいた。
「さて、どうしたもんかな」
ユージは腕を組んで、釣果を眺めた。
せっかくの新鮮な魚だ。
まずは刺身にしよう。
良型のシロギスを選り分け、一尾ずつ丁寧にウロコを落としていく。
頭と内臓を取り除き、手早く水洗いする。
水気を拭き取ると、包丁を入れて三枚に下ろした。
残りは天ぷら用だ。
こちらは頭と内臓を取り除いてから、背中に包丁を入れて松葉開きにする。
一尾、また一尾。
慣れた手つきで、次々と捌いていく。
刺身用の中骨も、すいた腹骨も捨てずに取り分けた。
骨せんべいにすれば、立派な酒の肴になる。
しかし、いかんせん数が多い。
「まったく、釣るのは楽しいが、捌くのは大変だぜ」
そうぼやきながらも、ユージの手は休まなかった。
ようやく下処理を終え、魚を冷蔵庫に収める。
刺身は客が来てから仕上げればいい。天ぷらも揚げたてを出すつもりだ。
ユージは大量のシロギスを眺め、しばらく考え込んだ。
「……こりゃ、ちょっとした祭りだな」
やがて、紙と太いマジックを取り出した。
そして、店の入り口に一枚の張り紙を掲げた。
『本日、キス祭り開催(参加自由)』
それだけだった。
料理の名前も、値段も、何も書いていない。
◇
「おいおい、何だこりゃ!」
最初に張り紙を見つけたのは、いつもの陽気な常連客だった。
「キス祭り? しかも参加自由だってよ!」
「なんだ、親父。とうとうおかしくなったか?あの仏頂面とキスってのは、勘弁して欲しいな」
「うるせえな。魚のキスに決まってんだろ」
「なんだ、そっちか!」
男は笑いながらスマホを取り出した。
「面白えから、みんなに教えてやろう」
「おい、余計なことすんなよ」
しかし、男はすでに張り紙の写真を撮っていた。
『門出屋でキス祭り開催中! 参加自由だってよ!』
常連たちのグループに、そんなメッセージが送られた。
そして、その夜。
店は開店早々、とんでもないことになった。
◇
「かんぱーい!」
店内に、威勢のいい声が響いた。
カウンターもテーブル席も、すでに客でいっぱいだ。
瓶ビールが早くも空になって行く。中には料理が出てくる前からすっかり出来上がっている者までいる。
その間、ユージは厨房で刺身の仕上げに取りかかっていた。
三枚に下ろしておいたシロギスの血合い骨を毛抜きで一本ずつ抜いていく。
続いて、薄い皮を慎重に引いた。
氷水にさっとくぐらせ、すぐに引き上げて水分を丁寧に拭き取る。
白く透き通った身を切り分け、大葉を敷いた皿に美しく盛り付けていく。
「おい、親父! まだ料理は出ねえのか!」
「うるせえ! 今作ってんだよ!」
厨房から怒鳴り声が返ってきた。
カウンターの端には、上品な老婦人が座っていた。
以前、亡き夫の残した言葉を胸に、この店を訪れた女性だ。
今日は小さなグラスを手に、賑やかな店内を楽しそうに眺めている。
隣の客が声をかけた。
「お母さん、騒がしくてすみませんねえ」
「いいえ。賑やかなのは楽しいですよ」
老婦人は穏やかに微笑んだ。
「主人も、こういう場所が大好きでしたから」
「そりゃいい! じゃあ、もう一杯どうです?」
「ふふっ。では、少しだけ」
その向こうでは、陽気なおじさんたちが相変わらず大騒ぎしている。
「おっ、今日も綺麗だねえ!」
「やだあ、もう。お上手なんだから!」
声をかけられたのは、以前香水がきついと追い返された女性だった。
今日は控えめな化粧に、ほんのりとした香り。
以前とはどこか雰囲気が違う。
「いやいや、本当に綺麗になったよ!」
「そんなこと言っても、何も出ませんよ?」
「じゃあ、一杯おごらせてくれ!」
「うふふ。ごちそうさまです!」
女性は満更でもなさそうに笑った。
奥のカウンターでは、老夫婦が、仲良く話している。
「あなた、今日はずいぶん賑やかね」
「そうだな。二人だとこうは行かんからな」
「そうねえ。若い人たちと一緒に飲むのも楽しいわね」
夫は頷くと、お猪口に酒を注いで舐めるように飲んだ。
別の席では、陽気なおっさんが、いつもの常連メンバーと楽しそうに話していた。
あの頃の険しい表情は、もう見られない。
◇
「はい、お待ち! 最初はキスの刺身だ!」
ユージが益子焼の刺身皿をカウンターに並べた。
「待ってました!」
「おう、やっと出てきた!」
「腹がぺこぺこだ!」
みな、思い思いに勝手なことを言う。
「別に食わなくてもいいんだぜ」
「さんざっぱら待たせて、そりゃ無いぜ!」
笑い声が広がった。
皿には、透き通るようなシロギスの刺身が美しく並んでいる。
「おお、綺麗だねえ!」
「キスって刺身でも食えるのか?」
「まあ、食ってみろ」
客たちが一斉に箸を伸ばした。
「……おっ!」
「何だこれ、うめえ!」
「甘いなあ!」
「身がしっかりしてるのに、柔らかい!」
ユージは得意げに鼻を鳴らした。
「美味いだろ? キスの刺身を味わえるのは、釣り人の特権だ。心して食えよ」
「なんだよ、恩着せがましいなあ!」
「だから嫌なら食わなくてもいいんだぜ!」
「食うに決まってるだろ!」
再び店内に笑いが溢れた。
老婦人も小さく箸を伸ばし、刺身を一切れ口に運んだ。
「あら、本当に美味しい」
そう言って、嬉しそうに目を細めた。
◇
「はーい! キスの天ぷら、揚がったわよ!」
大皿を抱えて現れたのは、あの鬼課長だった。
揚げたてのキス天が、皿に山盛りになっている。
「おおっ、待ってました!」
「熱いうちに食べてね!」
鬼課長は慣れた様子で皿をテーブルに置き、小皿を配っていく。
「おいおい、いつから門出屋に女将ができたんだ?」
常連の一人が冷やかした。
「うふふ」
鬼課長は意味深に笑った。
「おーい! 次が揚がったぞ!」
厨房からユージの声がした。
「はーい! すぐ行くわ!」
鬼課長は軽やかに返事をすると、厨房へ向かった。
「おい、なんかあの二人、妙に息が合ってないか?」
「そういや、最近よく来てるよな」
男たちは顔を見合わせ、にやにやと笑った。
当のユージは、そんなことにはお構いなしだ。
次々と衣をまとわせたシロギスを、油の中へ滑り込ませていく。
ジュワッ。
心地よい音が厨房に響いた。
薄い衣がふわりと広がり、やがて淡いきつね色に変わっていく。
ユージは揚げたてを網に上げ、余分な油を切った。
油切り紙を綺麗に敷いた皿の上に、器用に揚げたてのキスを盛り付ける。
「ほら、持ってけ」
「はーい!」
「大将、見た目と違って、料理は繊細ね!」
「なんだと!」
「じゃ、持ってくわね!」
鬼課長は楽しそうに皿を受け取った。
◇
天ぷらが一段落すると、ユージは取り分けておいたシロギスの骨を取り出した。
三枚下ろしで残った中骨と、刺身用にすいた腹骨だ。
水気をよく拭き取り、低めの温度の油へ入れて、じっくりと揚げる。
薄い腹骨は先に引き上げ、中骨はもう少し時間をかけた。
最後に油の温度を上げ、カリッと仕上げる。
軽く塩を振れば、骨せんべいの完成だ。
「おーい! 骨せんべいも揚がったぞ!」
「はーい!」
鬼課長が運んできた皿には、カリカリに揚がったシロギスの中骨と腹骨が山盛りになっていた。
「なんだ、骨じゃねえか!」
「そうよ。大将が、捨てるのはもったいないって」
常連の一人が、半信半疑で中骨をつまんだ。
ポリッ。
「おっ、うめえ!」
男は続けてもう一つ口へ運んだ。
「こりゃ止まらねえ! 酒が進むぜ!」
それを聞いた老婦人が、笑いながら口を開いた。
「土佐ではね、カツオの内臓の塩辛をつまみに、お酒を飲むんですよ」
「へえ、カツオの内臓ですか?」
「ええ。あまりに美味しくて、すぐにお酒がなくなってしまうから、酒を盗むと書いて『酒盗』って呼ばれているんですよ」
「ほお! そりゃ面白え!」
「じゃあ、この骨せんべいも酒盗みたいなもんだな!」
「わははは!」
老婦人も声を立てて笑った。
◇
「こんばんは!まだやってますか?」
新しい客が暖簾をくぐった。
「おっ、駅伝の兄ちゃんじゃねえか!」
ユージが顔を上げた。
入ってきたのは、能登の酒蔵で酒造りに取り組んでいる青年だった。
「たまたま大学の同窓会があって、こっちに来てたんです!」
「そうか。元気そうだな」
「はい! おかげさまで!」
青年は鞄から一本の酒瓶を取り出した。
「まだ僕の酒は出来上がってないので、今日はこれを持ってきました」
差し出されたのは、加賀鳶のひやおろしだった。
「おっ、いい酒じゃねえか」
ユージは瓶を手に取った。
「秋の酒も、そろそろ飲み納めだな」
「ええ。ぜひ皆さんで飲んでください」
「ありがとよ。で、酒造りはどうだ?」
「まだまだです。でも、少しずつ形になってきました」
「そうか」
ユージは短く頷いた。
「約束、覚えてますからね」
「ん?」
「美味い酒ができたら、送れって」
「ああ、そんなこと言ったな」
「絶対に送りますから!」
「おう。楽しみにしてるぜ」
ユージはそれだけ言うと、ひやおろしを冷蔵庫へしまった。
青年は嬉しそうに笑った。
その酒が完成するのは、まだ少し先のことだ。
◇
「大将! こんばんは!」
今度は元気な女性の声がした。
以前、この店でアジ料理を食べた女子プロゴルファーだった。
その隣には、可愛らしい若い女性が立っている。
「おう、いらっしゃい」
「今日は後輩を連れてきたよ!」
「初めまして!」
後輩が元気よく頭を下げた。
「いつも先輩からお話を聞いてます!」
「へえ、そうかい」
「この子ね、こないだツアー初優勝したんだよ! やんなっちゃうわよ」
女子プロは笑いながら、後輩の肩を叩いた。
「あっ!俺テレビで見てたぞ!今すごい人気なんだよな!」
「いえ、そんなことないですよ!」
「へえ、そうなんだ。若いのに優勝とはすごいな!そりゃおめでとう」
「ありがとうございます!」
後輩は嬉しそうに頭を下げた。
「でも、私、本当に先輩のゴルフを尊敬してるんです」
「またまた、お世辞が上手いんだから」
「本当ですよ! 確かに飛距離は普通ですけど、マネジメントとかメンタルとか、ホント参考になります」
「ちょっと! 飛距離は普通って余計じゃない?」
周囲から笑いが起こった。
「だって本当ですもん!」
後輩は真剣な顔になった。
「優勝した時も、最後のパットで手が震えちゃって、どうしようって思ったんです」
周囲の客たちも、思わず耳を傾けた。
「でも、その時、先輩の話を思い出したんです。そしたら、気がついたら勝手に手が動いて、ロングパットが決まっちゃったんですよ!それで一打差で優勝」
「へえ、そりゃすげえな!」
陽気なおじさんが感心したように声を上げた。
「で、二人ともキスは好きなのか?」
「えっ?」
後輩は一瞬固まり、みるみる顔を赤らめた。
「もう! この子はゴルフばっかりしてきて、スレてないんだから、からかわないでよ!」
女子プロが慌てて割って入った。
「キスって言っても、魚のキスだからね!」
「な、なんだ。そうなんですね……」
「わははは!」
店内が笑いに包まれた。
「ほら、これ食べてみな」
ユージが揚げたての天ぷらを差し出した。
「わあ、美味しそう!」
後輩は箸で一つつまみ、そっと口に運んだ。
サクッ。
軽い衣の中から、ふっくらとした白身が現れる。
「……美味しい!」
「だろ?」
ユージは満足そうに頷いた。
「大将、この子、ゴルフも食べるのも一生懸命なのよ」
「いいじゃねえか。若いうちは何でも一生懸命やりゃいいんだ」
「なんか、大将が言うと説得力あるなあ」
女子プロが笑った。
ユージは返事をせず、また厨房へ戻っていった。
◇
宴はまだまだ続いた。
青年が持参したひやおろしが開けられ、常連たちのグラスに注がれる。
「おお、いい酒だ!」
「骨せんべいにも合うねえ!」
「兄ちゃん、早く自分の酒を持ってこいよ!」
「はい! 頑張ります!」
青年は照れくさそうに笑った。
老婦人はそんな様子を、カウンターの端から楽しそうに眺めている。
老夫婦は二人で天ぷらを分け合い、香水の女性は陽気なおじさんたちに囲まれて笑っていた。
女子プロと後輩は、いつの間にか常連たちとゴルフ談義を始めている。
誰かが笑えば、誰かが笑い返す。
誰かが酒を注げば、誰かが礼を言う。
そんな、何でもない時間が流れていた。
ユージは厨房から、その様子をちらりと眺めた。
「まったく、よく飲む連中だ」
そうぼやきながらも、次の天ぷらを油へ落とした。
◇
やがて、夜も更けてきた。
客たちは一人、また一人と帰り始める。
「親父、ごちそうさん!」
「また来るよ!」
「おう、気をつけて帰れよ」
老婦人も立ち上がった。
「今日は本当に楽しかったわ。ごちそうさま」
「おう。また来てくれよ」
「ええ、もちろん」
老婦人は穏やかに微笑むと、暖簾をくぐっていった。
女子プロたちも帰り支度を始めた。
「大将、また来るね!」
「おう。試合、頑張れよ」
「ありがと!」
後輩も深々と頭を下げた。
「ごちそうさまでした!」
「おう。また連れてきてもらえ」
「はい!」
「私よりこの子の方が稼いでるんだけどね」
「そりゃ先輩の意地を見せるとこだろ」
「あはは、大将、安くしといてね」
こうして、賑やかだった店内も、少しずつ静けさを取り戻していった。
◇
店の喧騒も一息ついて、あれだけあったキスも、ほぼ売り切れた。
鬼課長は、カウンターに座っていた。
目の前には、遠慮の塊となって残った、最後のキスの天ぷらが一つ。
それを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「キスかぁ……。大将とならいいかも」
「ん? なんか言ったか?」
厨房からユージが顔を出した。
「なんでもない。さあ、そろそろ閉店ね」
鬼課長は微笑むと、空いた皿を重ね始めた。
「おいおい、客に片付けなんかさせられねえよ」
「いいじゃない。私が好きでやってるんだから」
「まったく、しょうがねえな」
ユージはそう言いながらも、それ以上は止めなかった。
二人は黙々と片付けを続けた。
皿を洗うユージ。
洗い終えた皿を拭いて、棚へ戻す鬼課長。
いつの間にか、そんな役割分担ができていた。
やがて、最後の皿が片付いた。
「ふう。終わったな」
「お疲れさま」
「おう。助かったよ」
鬼課長は嬉しそうに笑った。
「でも、本当に美味しかった。今日のキス」
「だろ? キスは美味いんだよ」
「……また、食べさせてね」
「おう。釣れたらな」
「ふふっ。約束よ」
ユージは小さく頷いた。
鬼課長は鞄を手に取り、店の入り口へ向かった。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おう。気をつけて帰れよ」
暖簾をくぐる直前、彼女は振り返った。
「大将」
「ん?」
「今日、楽しかったわ」
「……そりゃよかった」
鬼課長は微笑むと、静かに店を出ていった。
◇
店には、いつもの静けさが戻っていた。
ユージはカウンターに腰を下ろし、ようやく一息ついた。
今日一日の出来事を思い返す。
朝から釣りに出かけ、思いがけず大漁になった。
ただ、それだけのことだったはずなのに。
「やれやれ。ちょっと張り紙しただけで、とんだ騒ぎになっちまった」
ユージは小さく首を振った。
「まあ、それだけキスは美味いからな」
そう言いながら、えんじの暖簾をしまった。
程なくして、店の明かりが静かに消えた。
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