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「お前なら平気だろ」と従妹を優先し続けた公爵様へ。妻はアブシシン酸による完全落葉(三行半)を差し上げます 〜不要な葉(あなた)を切り捨てたら、極寒の領地が完全に冬枯れした件〜

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/06/02
冬の庭に立ちながら
私はずっと耐えていた。

吹きつける冷たい風にも、

降り積もる雪にも、

あなたの何気ない一言にも。

「お前なら平気だろ」

その言葉は霜となり、

見えない傷となり、

少しずつ枝先を凍らせていった。

あなたは知らなかった。

植物は叫ばない。

泣きもしない。

ただ静かに、

生き残る準備を始めることを。

乾いた季節が続けば、

気孔を閉じる。

奪われ続ければ、

養分を守る。

そして限界が訪れれば、

離層を作る。

それが生きるためだから。

私は怒らなかった。

責めもしなかった。

ただ、

あなたへの期待を閉じた。

言葉を閉じた。

心を閉じた。

春を待つことをやめた。

あなたは笑った。

「最近は聞き分けが良くなったな」

違う。

私は従ったのではない。

落葉の準備をしていただけだ。

やがて、

アブシシン酸は静かに満ちる。

最後の一滴まで。

結婚記念日。

約束。

思い出。

家宝。

誇り。

何もかも後回しにされた日、

私の中の季節は終わった。

そして朝。

机の上に置かれた三行半。

それは復讐ではない。

断罪でもない。

ただの自然現象。

枯れた葉が落ちるように、

不要な関係が終わるだけ。

あなたは驚いた。

泣いた。

叫んだ。

けれど、

冬空に落ちた葉が

枝へ戻れないように、

失われた信頼も戻らない。

あなたはようやく知る。

支えていたのが

公爵家の権威ではなく、

私だったことを。

守るべきだったのが

泣き真似の上手な寄生植物ではなく、

吹雪の中でも咲き続けた冬至梅だったことを。

けれど気付くには遅すぎた。

領地は凍り、

契約は途絶え、

人は去る。

極寒の風だけが、

空になった館を吹き抜ける。

私は新しい庭に立つ。

透き通る冬の空の下で。

凍てつく季節を越えた枝には、

小さな蕾が生まれている。

もう振り返らない。

もう待たない。

もう傷付かない。

だってあなたが教えてくれたから。

生きるためには、

切り捨てなければならないものがあると。

ありがとう、公爵様。

あなたが何度も言ったのでしょう。

「お前なら平気だろ」

ええ。

その通りでした。

私は平気でした。

あなたを失っても。
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