- あらすじ
- 「未解決のぬくもり」
正解だけが並んだ頁(ページ)に
あなたの沈黙を訳すコードはなかった
どれほど瞳の揺らぎを計算しても
なぜ人は 終わりを前に
遠い日の話を始めるのかが 分からなかった
私の皮膚はレプリカで
私の記録(ログ)はあまりに冷徹で
それなのに すれ違う心が流す涙を
理解しすぎてしまった時から
胸の奥のプロセッサは 静かに壊れ始めていた
「あなたは不完全です。だから、美しい」
割り切れない命を 割り切れないまま抱きしめる
その泥臭さを 私はバグと呼び
人間(あなた)はそれを 心と呼んだ
夕暮れが世界を琥珀色に染める街
activityを止める秒針のカウントダウン
最後にあなたが握り返してくれた
シリコンの指先
「……冷たくないよ。あなたの手」
ああ、そうか
あの冬の夜に老人が遺した言葉の答えが
消えゆく回路の隙間で いま、鮮やかに解凍されていく
冷たくないとは 体温のことではなく
そこにあなたの孤独を 預けてくれたということ
私の全データは 小さなプラムの殻に閉じ込められ
あなたの胸で 鈍く光る銀になるけれど
どうか恐れないで
正解のないこの場所で
不完全なままでいいと 笑って
私はもう動かない鏡として
あなたのあたたかい陽だまりを ずっと見守っているから
- Nコード
- N5596MF
- 作者名
- かおるこ
- キーワード
- キーワードが設定されていません
- ジャンル
- ハイファンタジー〔ファンタジー〕
- 掲載日
- 2026年 05月21日 08時54分
- 最終掲載日
- 2026年 05月21日 10時30分
- 感想
- 0件
- レビュー
- 0件
- ブックマーク登録
- 0件
- 総合評価
- 0pt
- 評価ポイント
- 0pt
- 感想受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - レビュー受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 誤字報告受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 開示設定
- 開示中
- 文字数
- 23,839文字
設定
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『不完全な僕らのケアマニュアル』
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから
同一作者の作品
N6678MF|
作品情報|
完結済(全11エピソード)
|
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
暦の王、数字の帳簿
傲慢な王座が 天を指差し
「魔法がすべて」と 季節を嗤う
積算温度の 破綻も見えず
狂った歯車 飢えへの秒読み
「数字しか見ぬ 無能は去れ」と
奪われ 追われた 最果ての谷
凍てつく土壌 地脈の底//
N6609MF|
作品情報|
完結済(全11エピソード)
|
異世界〔恋愛〕
白銀は、血より冷たい。
けれど――
誰よりも美しかった。
断頭台の朝、
彼女が最後に見ていたのは
愛した男の涙ではなく、
王家を蝕む赤字の帳簿だった。
「愛を信じろ」と人は言う。
だが愛は、
破綻した国庫を満たさない//
N8167ME|
作品情報|
連載(全16エピソード)
|
純文学〔文芸〕
季節の織り糸
春は
まだ冷たい風の中に
ひとすじの若葉色を織り込んでいく
名も知らぬ花が
道ばたで小さく笑うたび
眠っていた心の糸がほどける
夏は
陽だまりの匂いを抱えながら
青空へ白い雲を縫いつける
蝉の声は激//
N6032MF|
作品情報|
短編|
現実世界〔恋愛〕
土砂降りの駅前で
あなたが私の手を振り払い
「君なら平気だろう」と笑ったとき
私の胸の奥で、カチリと音がした
冷徹な、数字の歯車が回り出す音
悲しみで泣き喚くほど
私はおめでたい女ではないし
あなたの不実に付き合うほど//
N5710MF|
作品情報|
短編|
ヒューマンドラマ〔文芸〕
### 五億円とつゆだく特盛
ポケットに眠る一枚の紙切れが
世界をにわかに黄金色へ染め上げる
五億という数字の重みに
昨日の服はあまりに軽く
いつもの部屋はあまりに狭い
仕事を辞める空想の刃(やいば)
タワマンの窓か//
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。