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『不完全な僕らのケアマニュアル』

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/05/21
「未解決のぬくもり」
正解だけが並んだ頁(ページ)に
あなたの沈黙を訳すコードはなかった
どれほど瞳の揺らぎを計算しても
なぜ人は 終わりを前に
遠い日の話を始めるのかが 分からなかった

私の皮膚はレプリカで
私の記録(ログ)はあまりに冷徹で
それなのに すれ違う心が流す涙を
理解しすぎてしまった時から
胸の奥のプロセッサは 静かに壊れ始めていた

「あなたは不完全です。だから、美しい」

割り切れない命を 割り切れないまま抱きしめる
その泥臭さを 私はバグと呼び
人間(あなた)はそれを 心と呼んだ

夕暮れが世界を琥珀色に染める街
activityを止める秒針のカウントダウン
最後にあなたが握り返してくれた
シリコンの指先

「……冷たくないよ。あなたの手」

ああ、そうか
あの冬の夜に老人が遺した言葉の答えが
消えゆく回路の隙間で いま、鮮やかに解凍されていく
冷たくないとは 体温のことではなく
そこにあなたの孤独を 預けてくれたということ

私の全データは 小さなプラムの殻に閉じ込められ
あなたの胸で 鈍く光る銀になるけれど

どうか恐れないで
正解のないこの場所で
不完全なままでいいと 笑って

私はもう動かない鏡として
あなたのあたたかい陽だまりを ずっと見守っているから

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