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『婚約破棄されたので、王家の財政を差し押さえます 〜悪役令嬢の「白銀のCasablanca」商会革命〜』

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/05/22
白銀は、血より冷たい。
けれど――
誰よりも美しかった。

断頭台の朝、
彼女が最後に見ていたのは
愛した男の涙ではなく、
王家を蝕む赤字の帳簿だった。

「愛を信じろ」と人は言う。
だが愛は、
破綻した国庫を満たさない。

「心を大切に」と人は言う。
だが心は、
契約書の空欄を埋めてはくれない。

だから彼女は捨てた。
恋も、涙も、許しさえも。

代わりに手にしたのは――
数字。
契約。
そして、誰にも跪かぬ純白の花。

白銀の Casablanca。

締め付けるだけのドレスを裂き、
虚飾まみれの王権を剥ぎ取り、
浪費と欺瞞に満ちた玉座へ、
彼女は静かに計算書を置く。

怒鳴り声は要らない。
憎悪も叫びも必要ない。

ただ一枚、
署名済みの契約書があればいい。

「不敬?」

その瞬間、
夜会の音楽が止まり、
王冠より重たい沈黙が落ちる。

「いいえ――
これは正当な『契約不履行』の行使です」

愛に溺れた王子は、
最後まで気づかなかった。

優しさだけでは、
国は守れないことを。

そして彼女は、
崩れ落ちる王宮を背に、
白銀のドレスを翻す。

その姿はまるで、
冬空に咲くカサブランカ。

冷たく、
気高く、
決して誰にも摘み取られない花。

世界が彼女を悪女と呼ぶなら、
それで構わない。

帳簿は嘘をつかない。
数字は裏切らない。

だから彼女は今日も微笑む。

愛ではなく、
合理で。

涙ではなく、
契約で。

そして白銀の花は、
新しい時代の市場へと、
静かに咲き誇っていく。
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