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『わたくしを後回しにする夫など、こちらからお断りです』

最終エピソード掲載日:2026/05/16
夜のグラスに沈んだ
琥珀色のシャンパンは、
最後まであなたを待っていた。

けれど――
来なかったのは、あなたではなく。
最初から、
わたくしを選ぶ気などなかった“心”の方でしたのね。

---

「君なら大丈夫だろう」

その言葉で、
何度、わたくしは後回しにされたでしょう。

記念日も。
痛みも。
沈黙も。
崩れそうだった夜さえも。

あなたはいつも、
誰かの涙に酔い、
誰かの弱さに酔い、
“支えてくれる女”の孤独には気づかなかった。

---

漆黒のドレスは、喪服でした。

終わった愛を弔うための。

背中を大きく開けたのは、
もうあなたに守られる必要などないと、
世界へ示すため。

わたくしはようやく、
あなたの妻をやめるのです。

---

宝石とは不思議なもの。

本物は、
闇の中ほど美しく光る。

安物ほど、
光に縋りつき、
自らを飾り立てなければ輝けない。

だからあなたは、
あの子を選んだのでしょう。

軽くて、
甘くて、
何も知らない花を。

---

けれど。

誰が会社を守っていたのか。
誰が信用を繋いでいたのか。
誰があなたを“成功者”に見せていたのか。

失ってから、
ようやく知ったのでしょう?

玉座に立っていたつもりで、
あなたはずっと、
わたくしの手のひらの上にいたのだと。

---

さようなら。

もう、
あなたを待つことはありません。

冷えたスープも。
既読のつかない夜も。
空席のままの隣も。

すべて、
今日で終わり。

---

夜明け色のドレスが揺れる。

新しい人生の色。

誰かのためではなく、
わたくし自身のために纏う、
最初の一着。

香るカサブランカ。
鳴り響くヒール。
まっすぐ前を見る横顔。

――ええ。

わたくしを後回しにする男など、
こちらからお断りですわ。

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