最低最悪な家族に嫌気がさして家出した俺はとても綺麗な血をした貧乏領地の御令嬢に会いに行く

【人の内面は血と臓物を見れば分かる】

そんな価値観を持つイクノスは、闇社会を中心にその名を轟かせるバンディット一族の三男としてあらゆる戦場で数多の命を刈り取りながら流れ溢れ落ちる血や臓物の醜悪さにウンザリしていた。

ある日、ヌルい戦場で出逢った貧乏領地の再興を目指すヨルム・ヒロイットをイクノスは間違って袈裟斬りにしてしまうが彼女から噴き出す血に見惚れてしまう。

「なんて綺麗で生命の輝きに満ちた美しさなんだろう」

あまりの美しさに思わずヨルム・ヒロイットを助けてしまうが、一族の屋敷でその件について実父からは責任を問われ殺されそうになり、それを庇った姉ですら彼を理解しない怪物だった。

そんな最低最悪な家族に嫌気がさしたイクノスは失意の中で天啓の如く閃いてしまう。

「そんなに家族が嫌なら家を出れば良い」

単純にして明快な答えを得たイクノスはその日の内に屋敷から逃げ出し僅かな手掛かりをもとにヨルム・ヒロイットの暮らす領地へと向かうのだった。

この物語りは、悪を悪と知りながらも悪を肯定するイクノス・バンディットと、善性だけでは人は救われない事を知るヨルム・ヒロイットが出逢い恋する物語り。

二人の心は通じ合いその距離を次第に縮めていくが二人は自分達の運命を知らない。
世界で最初の信仰。
バンディットとヒロイット、その名に纏わるヒロイット領の秘密。
この秘密を紐解いた時、二人の想いはその結末を知る。

果たして全てを斬り裂く理外の剣はその美しき願いを護りきれるのだろうか……