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第十三話 名もなき森の未踏領域

 



 いつも魔獣駆除の為に来ている森の奥深く、の更に奥へと続く森には生息する魔獣が凶悪過ぎて人が踏み込めない秘境が存在する。


 今日は取り敢えずオーロアン教国の目的である【地脈精霊信仰】の遺跡とやらがどんなモノかと見に来たんだが……


 この森の広さといい、未開拓領域を放置している事といい、どうにも変な場所だな。


 こんな場所を抱えてヒロイット領の領民が不安にならないのは、この森が存在するのが当たり前でその森から生じる出来事は全て許容するという土着の風習が根付いているからだ。


 要は遥か昔から続く強力な洗脳とでも言うべき代物。


 その洗脳目的は信者を逃がさない為なのか、それともこの地を離れてはいけない何かがあるのか?

 流石にその辺の事情は俺でも調べようが無かった。


 俺に出来る調査は基本的に魔力で気配を完全遮断してからの潜入と盗聴だ。


 俺が本気を出せばたとえ俺が目の前にいても相手は俺という存在に気付けない。

 流石に触れられるとその効果は消し飛ぶが、それにさえ気を付けていれば俺に探れない人の秘密は存在しないだろう。


 まぁ他の家族が同じ事をした場合は例え相手に触れられようが、それこそ相手を殺そうが、殺した本人はもちろん周囲の人間にも自分の存在を認識させないらしいが。



「……おっと、思考が無駄な方向に逸れたな。えー、と?そろそろ未踏領域に入る筈なんだが……どう進むべきか分からんな」



 一応、太陽の位置から方角は分かるがそもそも遺跡の場所が分からないのでどう進めば辿り着けるか分からん。



「仕方ない、時間の許す限りしらみ潰しに探すしかないな」



 ギルドには暫く休むと報告しているし俺が数日姿を見せなくても怪しまれる事は無いだろう。


 未踏領域の更に奥へと足を踏み入れどんどん進んでいく。

 周囲の樹木や植物は既に一般的には出回らないような貴重なモノばかりになって来た。


 この辺りを開墾出来ればヒロイット領は一気に大金持ちになれるんじゃないか?

 いや、これだけ貴重な資源なら国に徴収されてもおかしくないし、下手したら利権が絡む争いが起きる可能性もあるな。


 ……よくこんな訳の分からん領地を放ったらかしにしていられるなゼントラル王国は。


 俺なら怖くて国から切り離すか完全隔離だ。


 もしかしたらそういう事も含めての洗脳か?

 だとしたらもうそれは土着の風習なんてレベルの話じゃない。

 何かしらの超常な力が働いていると疑うべき話だ。


 流石は【地脈精霊信仰】発祥の地と言ったところだな。



「それにしても既に未踏領域のど真ん中なのに凶悪な魔獣だとかに遭遇しないんだが……?」



 試しに魔力感知と気配察知を全開にして周囲を調べてみる。


 …………居るな。

 しかもかなりの数だ。

 感知範囲ギリギリの所で俺の様子を窺ってる?


 魔獣が獲物を観察?

 いやいや、魔獣に知性なんてある訳が無い。


 大体なんで俺の感知範囲を見切ってるんだって話だ。

 この感じだとわざと俺に気付かれる様にギリギリ一歩分入り込んでいる。



「……魔獣の分際で随分と舐めた態度を取るじゃないか」



 多分これは俺を試しているな?

『自分達はお前を見張っているぞ」と………


 こういうイラっとする感じは子供の頃ジンテノスに両手両足を面白半分にへし折られた時以来だ。


 ……駆除だな。

 先ずは先制攻撃を……



「ッ!!ガッ………!?」



 なんだっ!?

 魔獣共に突撃しようと思った瞬間、いきなり吹っ飛ばされた?


 攻撃!?


 誰が!?


 そりゃ魔獣だろ!!


 僅かな逡巡、瞬時の思考、即戦闘態勢。


 気付けば周囲の樹木を縫う様にして縦横無尽の突風が吹き荒れている。

 恐らく魔獣による現象だろうが関係ない。



「……そこだぁっ!!」



 突風目掛けて小手調の袈裟斬り。

 一瞬、ヨルム・ヒロイットとの出会いを思い出したが、今回はあの時の様な結果にはならなかった。


 というより逆にまた吹き飛ばされたんだが!?



「くっ……こ、のぉっ!!」



 素早く態勢を立て直し樹木を足場にもう一度突撃。


 今度はお前が吹っ飛べ!!


 魔力による身体強化を更に強めてカウンターの斬撃。



 《ッ!!?》


「ちっ!寸前で危険を感じて躱したかっ!!」



 やっぱり魔獣にしては賢い奴だ。


 しかし、今の躱しかたは相当無理をしたな?

 今ので突風の正体が見えた。



「まさかバンディットの知らない魔獣が存在しているなんて驚きだな。しかもどう見ても魔獣の範疇を超えてるだろ?」



 森を縦横無尽に吹き荒れていた突風の正体は見上げるほどの狼。

 熊よりデカく白というより白銀の毛並みをした巨狼が器用に四肢を使って樹木にへばりつき俺を見ている。


 一体何なんだ?

 獣の癖に唸り声すら出さない。

 その瞳を見て納得したが、間違いなくコイツには知性があり恐らく俺を値踏みしているんだろう。



「……おい、獣に値踏みされるほど俺は落ちぶれていないつもりだが? どうせ俺の言葉も理解しているんだろ? なんとか言ってみろ犬ッコロ」


 《フスッン!!》



 ………鼻息だけで返事しやがった。

 しかもなんかニヤケ面に見えるのは俺の気のせいか?


 これはアレか?

 馬鹿にされていると捉えて良いのか?


 ああ、なるほど。

 そうかそうか、さては自分の方が強いと思ってるんだな?


 いいだろう、俺も何故か気分が高揚して来たところだ。

 とことんやってやろうじゃないか!!


 戦う事を愉しいと思ったのは初めてだ。

 その礼としてお前の毛皮は敷物にしてやるっ!!



 俺は当初の目的をすっかり忘れて謎の高揚感に身を委ね白銀の巨狼との戦いを続けた。






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