五年で三十二回毒を呑まされた元毒見役ですが、嫁ぎ先の食卓にも毒がございました ~毒と美食の大公家事件簿~
最終エピソード掲載日:2026/09/29
毒見役を辞めた彼女が、辞めた技だけで人を救う話。
北のノルデン大公領。冬のあいだ閉ざされていた塩の道が開き、城下は祭りに沸いていた。その祭りの席で、隊商の頭が倒れる。土地の医師は「古い樽の事故だ」と言い、誰もが頷いた。この土地では、春のたびに何人かが倒れて、何人かは死ぬ。
けれど大公妃リーゼロッテだけは、その椀から立つ匂いを知っていた。焦がした杏子に似た、甘い香り。水では香らず、酒でだけ立つ毒。
「これは、事故ではございません」
かつて彼女は、五年のあいだに三十二の毒を呑まされた。その舌はもう、勝手には読まない。だから今は、確かめると決めて読む。
塩と燻製が味を覆い隠すこの土地は、毒を隠すのにこれ以上ない場所だ。
そして彼女は、皿の先にいる人間を見る目を持っている。
北のノルデン大公領。冬のあいだ閉ざされていた塩の道が開き、城下は祭りに沸いていた。その祭りの席で、隊商の頭が倒れる。土地の医師は「古い樽の事故だ」と言い、誰もが頷いた。この土地では、春のたびに何人かが倒れて、何人かは死ぬ。
けれど大公妃リーゼロッテだけは、その椀から立つ匂いを知っていた。焦がした杏子に似た、甘い香り。水では香らず、酒でだけ立つ毒。
「これは、事故ではございません」
かつて彼女は、五年のあいだに三十二の毒を呑まされた。その舌はもう、勝手には読まない。だから今は、確かめると決めて読む。
塩と燻製が味を覆い隠すこの土地は、毒を隠すのにこれ以上ない場所だ。
そして彼女は、皿の先にいる人間を見る目を持っている。
第一話 毒見役は廃業いたしましたけれど
2026/09/03 19:00
(改)
第二話 帳面は嘘をつきませんの
2026/09/05 19:00
(改)
第三話 誰も、火にかけておりません
2026/09/08 19:00
(改)
第四話 これは毒ではございません
2026/09/10 19:00
(改)
第五話 境目は、樽にございません
2026/09/12 19:00
(改)
第六話 その根は、漬かっておりません
2026/09/15 19:00
(改)
第七話 この塩は、献上できません
2026/09/17 19:00
(改)
第八話 掘った塩は、消えておりません
2026/09/19 19:00
(改)
第九話 あなたは、坑へ降りておりません
2026/09/22 19:00
(改)
第十話 外から、誰も参っておりません
2026/09/24 19:00
(改)
第十一話 この毒は、もう売っておりません
2026/09/26 19:00
(改)
第十二話 一度も、止めておりません
2026/09/29 13:00
(改)
第十三話 その名は、どこにも書かれておりません
2026/09/29 19:00
(改)