念のためと夫に呼ばれ続けて、三年目の朝が来た
最終エピソード掲載日:2026/05/29
私の名前は、もう、念のためと呼ばれない。
三年、夫の口から出るその四文字を、私は数えてきた。
朝食の白湯に浮かぶレモンの皮ほど、軽い四文字。
その朝、夫は商会の令嬢を改鋳の主任に据えた。
私の印は、最後にひとつ押せばいい、と言われた。
私は、最後の試金石を白布にしまった。
戻る先は、実家ではない。
三年休んでいた、自分の机だ。
地金の小数点は、誰の印が飾りだったかを正直に教える。
中央から来た監察使は、まず私の控えから疑った。
私はそれを当然と思い、青表紙の台帳を差し出した。
私はもう一度、どの紙に、誰の名前のために、印を押すのか。
それを、まだ、決めていない。
三年、夫の口から出るその四文字を、私は数えてきた。
朝食の白湯に浮かぶレモンの皮ほど、軽い四文字。
その朝、夫は商会の令嬢を改鋳の主任に据えた。
私の印は、最後にひとつ押せばいい、と言われた。
私は、最後の試金石を白布にしまった。
戻る先は、実家ではない。
三年休んでいた、自分の机だ。
地金の小数点は、誰の印が飾りだったかを正直に教える。
中央から来た監察使は、まず私の控えから疑った。
私はそれを当然と思い、青表紙の台帳を差し出した。
私はもう一度、どの紙に、誰の名前のために、印を押すのか。
それを、まだ、決めていない。
第1話 念のため、と夫は言った
2026/05/29 11:29
第2話 白布の試金石
2026/05/29 11:29
第3話 席は空けて待ってあったぞ
2026/05/29 11:29
第4話 先代の手帳
2026/05/29 11:29
第5話 監察使、宿に着く
2026/05/29 11:29
第6話 黄色い警戒符はまだ出ていない
2026/05/29 11:29
第7話 父の名で押したのではない、私の名で押した
2026/05/29 11:29
第8話 数字に名前を寄せないでください
2026/05/29 11:29
第9話 改鋳停止令
2026/05/29 11:29
第10話 別の便箋
2026/05/29 11:29