カナリアではないけれど
最新エピソード掲載日:2026/05/08
少ししゃがれ声の立花美鈴は三歳の頃、『大正のカナリア』と称されるソプラノ歌手の母から汚い声と言われ、心に深い傷を負う。その影響で、父と父方の祖父母の前でしか喋れなくなった。それは二十四歳になった今でも変わっていない。家族の前でしか喋れないから一生結婚はできないと思っていたが、父が縁談を持ち帰った。相手は父の友人の息子、二十五歳の銀行員、庄司千昭。千昭は美鈴が喋れないことを気にしないと言ったらしい。庄司家との顔合わせが終了した日の夜、美鈴の父が急逝する。忌中明け、千昭とその父が訪ねてきた。神妙な面持ちの二人に美鈴は、破談にしたいと言われるのではないか、と思った。だが、結婚の予定を早めないかと提案される。二週間後、美鈴と千昭は結婚し、新婚生活がスタートする。