第6話-41 ブラウンアウト 6 物理は友達
「大丈夫かグレア!?」
副操縦席に足を引き寄せたグレア。俺の呼びかけに、彼女は両足のふくらはぎから足首を撫でるように確認して、俺に細かい首肯を激しく繰り返した。
足にケガがないか心配だったが、様子を見る限り大丈夫そうだった。
「ボス! 今の音は!?」
「分かんねぇ! すぐナクルに引き返す!」
TANONに問題が起きたのは間違いない。
操縦桿もペダルも正常。操作に動翼が追従する。再開した旋回操作に追従する機体。
だが何か様子がおかしい。その違和感の原因に気がつくまでに、俺は少し時間がかかった。
座席の背もたれから引き離されるような感覚。綿のシートベルトに、前に押しつけられる感覚が消えないのだ。
鼓膜を震わせた爆音の感覚が耳に残ったまま、機体が静かになっていることに気づく。
プロペラの騒音が消えた。
いや、プロペラの音は聞こえているが、吠えることもなく大人しくなったのだ。
今まで1450rpmあたりを指していた計器盤のプロペラの回転計が、いま900rpmくらいまで落ちている。一番から四番まで全部。主機スロットルは全開のままだ。
……魔導モーターの出力が落ちた?
「あれ。出力が上がらん」
一番から四番まで、全スロットルを一旦ゼロに落とし、もう一度全開まで押し上げる――反応がない。
盛り上がるはずのプロペラの騒音も、加速感もない。回転計の針も連動しない。
スロットルを落として、もう一度スロットルを上げる……変化なし。
「ちょっとマズい……主機の魔導モーター全滅したかも」
「なに、今の凄い音のせいで?」
「マズイマズイマズイマズイ、このタイミングはマジで洒落になんねぇ」
よりにもよって、試験空域の大逸脱に気づいて転進した瞬間の推力喪失。
コックピットからの視界に広がるのは広大な、固そうな地面の荒野じみた砂漠。ナクルはその遙か向こう。
開放されたままのサイドドアから、ゴオォ、ヒュルビュルと風を切る音が機内を支配する。ほかに何も聞こえない。
「頼む、頼むぜ、再起動してくれよ……!」
ダメ元で腕輪からプラグを引き抜いて、もう一度差し込で、推力レバーを再び動かす。反応がない。
魔力量の個人差を受け止める一次減衰装置の減衰設定を下げたが、それも無駄な足掻きだった。
やべぇ、ホントに墜ちるぞこれ。
「――アダチ。アダチ!」
グレアがシートベルトに身体を押さえられながら、腕を伸ばして俺の肩を叩いた。拳だった。
手を止めた俺と、グレアの目が合う。瞬き一周期分の沈黙があって、彼女は伸ばした拳を突いて俺の身体を揺らした。
「主機は死んだかもしれないけど、飛行艇は飛べてるじゃない! 私の翼には珍妙なプロペラなるものなんかないけど、ちゃんと飛べるのよ」
「…………。」
「余裕はないかもだけど、落ち着いて何か対応する時間くらいはあるわ」
「……そうかもな」
シートベルトに体重を預けるように身を乗り出して、グレアの真面目なジト目が俺を見上げる。
そうだ、グレアの言うとおりだ。推力を全喪失したからって、すぐ墜落するわけじゃない。現にまだ空を飛べている。
「ボス、結局何が起きたって?」
「機械に何か故障があって、滑空しかできなくなった」
「ぇえー!? ここ砂漠だよー!?」
コックピットに詰めてきたクラリとブロウルに、俺は現状を説明する。原因不明だが、上昇と加速ができないこと。それ以外の操縦については今のところ大丈夫そうなこと。
それから、計算せずとも自明な現実――この距離と高度では、ナクルまでたどり着けそうにないこと。
「クラリは、とりあえずダメ元でいい。信号灯でナクルに向けて不時着と救援を送り続けてくれ」
「ブロウルは下層階、主砲のある部屋に降りて、何か壊れた機械がないか確認を頼む。首の皮一枚で機能してそうな装置がないかも頼む」
首肯した二人が持ち場へ移動していく。
続く俺が直面するのはジレンマだった。
ナクルへの最短ルートへ機首を向ければ、ここからナクルに近いところに不時着できるはずだ。ナクルからの助けも来やすいだろう。だがそもそも太陽の逆光から脱出できず、クラリの通信は最後まで届かないかもしれない。
信号が届かないなら、そもそもナクルは不時着を認識できず、救援もない。
なら太陽の逆光から最大限逃れるルートに機首を向ければどうか。
クラリの救難信号は届くかもしれないが、現時点で太陽とナクルの直線上に隠れているなら、避けるためには太陽光線に対して直角に逃げる必要がある。ナクルとの距離は大して近くならない。救援そのものが難しいかもしれねえ。
……両取りが一番か。悪くいえば中途半端だが。
俺は中間に機体の進路を取ることにした。倍力装置がまだ生きていて、操縦に素直に追従してくれるのは不幸中の幸いだ。
「あ~あ。私の神都行きの夢もここで終わったわ」
グレアが両手を頭の後ろに組み、コックピットの前景を眺めて、わざとらしく俺を見た。
「こんなすぐ壊れる船じゃ、神都まで持ちこたえられないかしら」
「課題と性能を洗い出すために試験してんだろうが」
気圧高度計が700メートルを切った。対気速度計は1.5弱、プロペラの回転計は860rpmくらいまで落ちている。
サイドドアから吹き込む風の轟音以外は静かだ。
「悪ぃボス!! どっか壊れてるか探したけど、俺バカだからさ、全然分かんなかった!」
下層階から上がってきたブロウルがコックピットに駆け込む。
俺は操縦桿を握ったまま、ブロウルに片手を挙げた。
「索は切れたり緩んでなかったか?」
「いや、なかったと思う」
「大丈夫だ。その情報だけで十分役に立つ」
下層階に張り出しているのは、主に後付け装備の倍力装置類だ。そこに損傷がないなら操舵そのものは問題がない。
主機類の制御装置はコックピット足元にあるから、やはりその故障だと俺は思う。
「クラリ! ナクルから返事は!?」
「まだないです!!」
「ダメか……」
クラリには引き続きナクルとのコンタクトを取らせつつ、グレアとブロウルに、着陸場所を探してもらうことにした。
条件は広く平坦で、大きな石や岩のような障害物がない場所だ。といっても、見渡す限りが条件に当てはまるように見えるが。
それは俺だけの話ではなく、二人にとっても同じだった。
「クラリ、もういい! だいぶ高度が落ちてきた、この高度じゃもう届かん」
「はい!」
気圧高度計が500mを切ったあたりで、俺は意を決して全員コックピットに集まるように告げる。
速度こそ1.5弱を保っているが、コックピットの視界から見える巨大な砂の地表が迫る。
「グレア、クラリ、ブロウル。これから不時着、緊急着陸する」
「……。」
「全員、脱出しろ。ここから先は俺一人でやる」
「は!?」
「えぇー!?」
俺の言葉に皆が口を揃える。
今の自分の判断が大袈裟なのか、はたまた適切なのか。感覚が掴めていない。だが俺の論理は脱出させるべきだと主張するのだ。
直感が決めあぐねるなら、ロジックに頼るしかない。
「お前らも知ってると思うが、着陸が一番危ない。特に今回は初回で未経験、加えて地上の支援もないときた。状況は最悪と言っていい」
「俺達は助かるかもしれねえけど、ボスはどうすんだよ!?」
「気持ちはありがたいが、先に脱出しろ。俺がやらかしたら頼む。そっちの方がまだ堅実だ」
仮に皆が機内に残ったとして、何ができる? 着陸に失敗したとき、こいつらに何ができる?
失敗すると分かるのは地上ギリギリになってから、あるいは着地してすぐだ。そこでダメだと気づいて何ができる?
俺を抱えて脱出するには、高度も時間も足りん。俺が皆にそう説明するが、納得いかない様子だった。
特にブロウルは、緊急時に俺を守ると豪語したのを気にしてか、操縦席の背もたれから顔を出してひときわ渋っていた。
「まぁそう、そうだけどよ……」
「俺以外に、この機体を操縦できる奴がいるか?」
「…………。」
「時間がない。お前ら行け、早く! グズグズしてると俺が着陸に掛ける余裕がなくなって、かえって邪魔だ」
「……ボス。『失敗するな』は無理かもしれねえけど、しくじるなら上手くやれよ」
ブロウルが少しばつが悪そうに言って拳を突き出す。俺も応じて拳を突き合わせた瞬間、バチンと音が鳴る。ブロウルの拳が強くて、俺の指に響く痛みが骨に沁みた。
ブロウルそのまま、行くぞと声を掛けてクラリを抱え上げる。
「じゃあ地上でな!」
彼の声に背もたれ越しに身を翻すと、信号灯を持ったクラリとブロウルが、サイドドアから飛び込むように後方の空へ消えていく瞬間が見えた。
「グレアも。シートベルトの外し方は分かってんだろ」
彼女は無言でシートベルトを外して、足を抜くようにコックピットを抜けた。
大きく一息吐いて、操縦桿を両手で握り直す。激しい風切り音以外聞こえない機内、迫る地表。
これから俺一人で戦わにゃならんのは正直不安でしかない。この状況で自信を持てる奴の方が珍しいだろうが。
上の空になりそうな思考と速くなる鼓動。息が上がりそうになる。
ふと視線を感じた気がして後ろを見る。グレアがサイドドアの縁に手を掛けたまま、居残っていた。こちらをじっと見ている。
「なにしてんだお前、早く行けよ!」
吹き込む強烈な風で、彼女の髪とメイド服――ロングスカートが激しく揺れる。俺のことをじっと見るいつものジト目。表情はうまく読み取れないが、俺には不安げな面持ちに見えた。
「もう大丈夫だ、俺がなんとかするって! 死にやしねぇよ!」
「…………。」
「お前を神都まで連れていくって約束してっからな!!」
俺はグレアに自信ありげな顔を見せつけた。サムズアップを添えて。
相変わらずグレアは未練気に俺を見つめたままで、俺がアゴで行けよと促してようやく、機外の猛烈な風に身を委ねるように倒れて飛び降りていった。
――みんな、行ったな。
機内に残るのは俺しかいない。グレアが座っていた副操縦席も、いまや引き出されたままのシートベルトがだらしなく座席に波打っている。
ここから先は孤立無援の戦いか……パラシュートなしで単身スカイダイブできる天使の方々が、これほど心底羨ましいと思った瞬間はない。
人の気配が消えた機内に、孤独が漂う。言い逃れはできない。ここからは俺ひとりの判断とタイミングで全てが決まる。
「ママァァァァ――ッ!!」
「ああああ物理は友達、物理は友達、物理は友達――物理の教師こそいけ好かなかったが、古典力学も流体力学も熱力学も大好きだ――機械工学となら添い寝したっていい! 頼むから裏切ってくれるなよ……」
機内に響き渡る全力の叫びに乗せた言葉。正直無意識に出た。
怖すぎて涙が出てくる。叫べればなんだって良かった。分かってんだよ。遠く世界を隔てた親なんか叫んだって、どうにもならねぇことくらい。
でも分かるだろ?
初飛行、試験空域を逸脱、動力を全喪失、砂漠に不時着に加えて、頼れるのは俺しかいないときた。
着陸に失敗すれば死ぬ。仮に即死を免れ重傷に留まったとしても、間違いなく救援は来ない。死ぬまでに苦しむ時間が増えるだけだ。
こんな絶望的な状況、なんでもいいから頼りたくなるだろ!
物理に一通りの命乞いを済ませた俺は、両手で何度か顔を叩いてもみほぐす。
神使とかいう御利益もよく分からん宗教的存在に頼るよか、物理の方が掟も明快で飛行実績も出してるだけ頼りになるのは間違いない。
コックピットの景色は、空より地面の方が大きくなっている。気圧高度計は約0.98、高度250メートル――もう時間がない。
泣き言ばっか言ってたら死ぬ。
「ここまで来て、こんなコトでくたばってられっかよおぉぉぉ――!!」
着陸脚の展開レバーを探す。コックピットの中央にあるはず……あった。
レバーを倒せば、確か固定ロックピンが解除され、ギアを格納状態で維持するためのロックピンが外れる。あとは重力で自然に展開するはずだ。
大型機のTANONが、高速で不整地に着陸する――それ自体は想定のど真ん中だが、実際の飛行で果たしてちゃんとギアが降りるのか、専用設計された車輪が破壊されずに、艇体を支えて機能するのかは知らない。
ランディングギアが陸地を踏みしめたことはない。今日の飛行試験の対象外だったし、それは後の試験で確認することだった。
四の五の言ってられねぇ。
固定ロックを解除すると、サイレンじみた歯車の駆動音がして、飛行艇をハンマーで上から叩いたような衝撃と同時に止む。
空気抵抗だろうか、機体の減速を感じる。正しく展開されたかは神のみぞ知るが、知ったことではない。
あれだけのガッチリとした衝撃で展開できていなけりゃ、工業ギルドにリコールを要求してやる。雲の上からな。
「降下が速えぇ……」
速度を失い沈むように地表へ加速していく機体。このままでは地面に激しく叩き付けられそうだ。慌ててフラップを展開する。25度。
今度は転じて機体が上へ吸い込まれるように上昇すると同時にさらに減速、下降に転じる。対気速度計を見る。グレアのつけた離昇速度の目印より若干上――1.1、いや1.2との中間くらいか。
とりあえず、この速度を維持するか……。
放射状に広がっていく砂漠の景色に、不動の中央一点が見える。マズい。
ギアとフラップで疎かになっていた操縦桿を握り直し、機首を緩やかな上向きに揃え、後輪の主脚から設置するように維持する。
地面が迫るにつれて、操作できる遊びが少なくなっていく緊張感。高度十数メートルほどのところで、まるでクッションに乗ったかのように降下が収まる。飛行艇はまだ飛んでいたいと言わんばかりに、なかなか地面に降りない。
前方を見渡す限り、今のところ岩や大型植物のような障害物は見えないが、いつ出てくるか分からん。それに引っかけて大破するわけにもいかない。
早く着陸しなければいけないが、この機体にエアブレーキはない。障害物に衝突しないことを祈るしかないのか。
機内を風切り音とプロペラの静かな振動が包む。生きるか死ぬかの瀬戸際だというのに、状況は不気味に穏やかだった。
――いや、TANONにはまだ、減速に使える武器が、ある。あるじゃねぇか!
俺は操縦桿を操作して姿勢を維持しながら、もう片手でプロペラピッチの操作に手を伸ばす。
前景を見て機体の姿勢維持に集中しながら、一瞬の合間を縫って、ピッチを22.5度から8度へ変える。
TANONのプロペラが息を吹き返したように咆哮を上げ、回転数を増していく。
魔導モーターは依然として死んだままだ。風の力だけで、650rpm付近を指していた四つの回転計の針が一気に1700rpm付近まで駆け上がる。
プロペラを風の盾、エアブレーキの代用に使える。それが俺の閃きだった。
機体に強力な減速が掛かる。そのまま地面に吸い込まれるように落ちるのを、さらに機首を引き上げて調整する。
飛行艇の底から、ガタゴロと上下に揺れる振動と轟音が伝わる。後ろの主脚ギアが接地した音だ。
上げていた機首を慎重に地面に下ろそうとして――スドンと前脚が荒っぽく接地した。減速が強くて操舵力を奪う方が早かったのだ。
俺はペダルを全力で踏んで機体にブレーキを掛ける。
「うおおおおお――!!」
効いてんのかよこれェ!! ペダルを踏みながらプロペラピッチを-8度、スラストリバーサモードへ切り替える。
風圧を受けて上昇したプロペラとモーターの回転を、逆噴射で空気を前方に押し出す制動力に引き換える。
ぐい、と押し返されるような力が駆け抜け、シートベルトに拘束される。
「止まれ止まれぇぇぇぇ――!!」
急速に回転数が落ちる音と同時に、逆噴射モードのプロペラが濃密な砂漠の砂埃を舞い上げ、後ろから前へ吹き付ける。コックピットの視界は赤茶けた砂塵に一気に覆われ、視界を失う。
何も見えなくなったコックピットで、ひたすらブレーキのペダルを踏み続ける。
車輪が地面を走る音が聞こえない――いつの間にか機体が静止していることに気づいたのは、減速感覚よりも耳が先だった。
「止まっ、た……?」
大きく安堵の息を吐こうと息を吸い込み、砂塵を吸い込んで思い切りむせる。
機内に舞い上げた砂煙が充満している。咳き込むたびに吸い込んでまたむせる。口元に腕をあてがって、息を殺した。
きっとサイドドアをずっと開放したままだったせいだ。
逆噴射したときか、それ以外なのかは分からんが、着陸で舞い上げた砂埃の雲が機内に入りこんだらしい。
ヒーンと甲高い音を立てる倍力装置の冷却ファンの音と、トトトトと機械が動く音が、機内で寂しく鳴っていた。
腕輪から伸びるプラグを抜くと同時に、倍力装置の冷却音が立ち消えた。
「ゲッホ……次からは、サイドドアを閉めてから飛び降りるように頼むか……」
スカイダイブしたらドアを閉めろなんざ、どだい無理なことは百も承知である。
心臓がまだバクバクと鼓動している。シートベルトを外し、背もたれに深く沈み込む。
舞い上がる砂塵で見えなくなったコックピットの視界が少しずつ晴れてくる。力の抜けた俺は、それを無心で眺めていた。
「おーい! 大丈夫か!?」
機内の砂埃が完全に落ち着くのを待たずして、ブロウルはサイドドアから様子を伺って乗り込んできた。木の板に響く彼の足音がやけに目立つ。
「なんとかな……飛行艇はいいやもう……怖えよこれ……」
「なに言ってんだよ、ちゃんと飛べたし、降りれたじゃんかよ!」
ブロウルが操縦席の脇につま先立ちでしゃがんで俺を見上げて、俺の肩を揺すった。
魂が抜けて首の据わってない俺の頭が右へ左へ揺れる。地上が硬い砂地の平坦な砂漠だったのは不幸中の幸いだった。
これが自然豊かな地形だとか、豊かな草木に囲まれた場所、あるいはナクルのような街だったら終わってたかもしれねぇ。
仮にクル川に不時着できたとしても、今回は下流に流されることは確定だった。つまり、流れに乗ってヴォルグラド帝国領行きである。
水上機動も魔導モーターに頼っている都合上、川でも操縦不能は間違いない。機体を損傷させつつ乱回転しながら通商船あたりに衝突して、船員にボロクソにキレられる道中イベントも、恐らくもれなく付いてくる。
マジで砂漠で命拾いした。
「アダチ、ちゃんと死んだ?」
一足遅れて、サイドドアのステップに足を掛ける音がして、グレアの呑気な声が機内に響いた。
「残念だったな、生きてるよ……」
たぶんサイドドアの入り口で顔を覗かせてるんだろう。振り返って顔を見る気力も沸かず、天井にヘロヘロの返事を響かせた。




