婚約破棄されたので、お預かりしていた肖像画をすべてお返しします
婚約破棄されたので、お預かりしていた肖像画をすべてお返しします【連載版】
最新エピソード掲載日:2026/11/08
「陰気で、笑わず、絵の具臭い女を、王子妃にはできない」
春の夜会で、宮廷画家の娘イルゼは婚約を破棄された。
「承知いたしました。では、お預かりしていた二百十二個を、すべてお返しいたします」
この国の貴族は、老いも罪も後ろめたさも、グラウベルク家の画家が描く肖像画に預けて、美しく生きている。
預かった影は、預かり役の指に、灰色の染みとなって溜まっていく。グラウベルク家の画家は、誰も三十五を越えずに死ぬ。
縁が切れたので、預かっていたものを返しただけ。
翌朝、王子の髪は白くなり、宮廷は青ざめた。
けれど返すほどに、イルゼは知っていく。引き取り手のいない死者の絵。灰の降る東の町。預かり役の家が生まれた本当の理由。そして、建国の日から誰も返していない、一枚の絵。
無口な修復師ノアは、彼女の指先を見て言った。
「その色は、どの顔料にもない」
返すのは、王子の罪から、この国の四百年分の罪まで。
最後に、イルゼは、自分のための絵を描けるのか。
※短編『婚約破棄されたので、お預かりしていた肖像画をすべてお返しします』の連載版です。
春の夜会で、宮廷画家の娘イルゼは婚約を破棄された。
「承知いたしました。では、お預かりしていた二百十二個を、すべてお返しいたします」
この国の貴族は、老いも罪も後ろめたさも、グラウベルク家の画家が描く肖像画に預けて、美しく生きている。
預かった影は、預かり役の指に、灰色の染みとなって溜まっていく。グラウベルク家の画家は、誰も三十五を越えずに死ぬ。
縁が切れたので、預かっていたものを返しただけ。
翌朝、王子の髪は白くなり、宮廷は青ざめた。
けれど返すほどに、イルゼは知っていく。引き取り手のいない死者の絵。灰の降る東の町。預かり役の家が生まれた本当の理由。そして、建国の日から誰も返していない、一枚の絵。
無口な修復師ノアは、彼女の指先を見て言った。
「その色は、どの顔料にもない」
返すのは、王子の罪から、この国の四百年分の罪まで。
最後に、イルゼは、自分のための絵を描けるのか。
※短編『婚約破棄されたので、お預かりしていた肖像画をすべてお返しします』の連載版です。
第一部 二百十二個ございます
第1話 二百十二個ございます
2026/11/08 09:26
(改)
第2話 夜明けまでの蝋
2026/11/08 09:30
第3話 鏡の中の白髪(ヴィンフリート視点)
2026/11/08 09:30
第4話 それはあなたの傷です(ロジーナ視点)
2026/11/08 09:30
第5話 どの顔料にもない色
2026/11/08 09:30
第6話 急に丁寧になる人々
2026/11/08 10:30
第7話 返さないでくださいませ
2026/11/08 11:30
第8話 泣けない夫人(アーデルハイト視点)
2026/11/08 12:30
第9話 看取りの返却
2026/11/08 12:30
第10話 修復記録(ノア視点)
2026/11/08 13:30
第11話 二通目の縁組
2026/11/08 14:30