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婚約者の想う病弱な幼馴染を完治させて、薬師のわたしは身を引きます ~「あの子は病気だから」が使えなくなる日まで、あと二十週~

作者:くらたん
最新エピソード掲載日:2026/08/06
 「すまない。ネーヴェが発作を起こした」

 婚約披露の朝に届いた書き置きは、これで三度目でした。

 王立薬院の薬師ノエラ・ハースは、怒りませんでした。怒る代わりに、往診鞄を持ちました。

 十年、病室の外へ出ていない幼馴染のネーヴェ・クーレ。婚約者ダニエルが、十年欠かさず通いつづけている娘。その枕元に立って、ノエラは薬瓶の栓を抜き、匂いを嗅いで――気づいてしまいます。

 この方を弱らせているのは、病ではない。十年出されつづけた、この鎮静水のほうだと。

 そしてネーヴェは、泣きながら告白します。

 「……治ったと言ったら、あの方は、もう来てくださらないでしょう?」

 ノエラは婚約指輪を外し、薬瓶の横に置きました。

 「では、治しましょう。あの方がわたしたち二人を不幸にするための、口実ごと」

 減薬に二十週。〈|代診《だいしん》〉には本人の求めと、主治医への通知と、七日の猶予が要ります。恋敵を治す薬師と、治りたくなかった娘と、妹の薬を十年、一度も確かめなかった監察医の話です。

 必要とされることは、愛されることではありませんでした。
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