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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

帳の外

帳の外  ―まだ、俺のものじゃない―

作者:佐和井 泥
最新エピソード掲載日:2026/10/24
親父の身体は、ほとんど親父のものじゃない。

ネオ新宿では、身体を分割で買う。腕も脚も心臓も、払い終わるまでは他人の持ち物だ。義体の規格は数年ごとに更新され、古い型は「非適合」として使える場所を削られ、最後には合法的に回収される。誰も殴らない。届くのは丁寧な書面と、動かない期日だけ。

歓楽街の雑居ビルで用心棒を営むトロール系の亜人、鷲津(わしづ)ダン。身体の大半がローンでできている。口を開けば金の話ばかりなのに、依頼人から一度も取り立てたことがない。戦うたびに部品はすり減り、返済は遅れ、回収の期日が近づいていく。

息子のハルは十七歳。混血の生身で、義体はひとつも入っていない。そのかわり霊素の流れが読める。嘘をつく人間の気配も、義体のどこに無理がかかっているかも、触れずにわかる。義体と生身の継ぎ目を指一本で打ち、大男を止める技「目釘抜き(めくぎぬき)」も持っている。
けれど父は息子を戦わせない。「お前は電話番だ」と言うばかりで、その理由を口にしたことは一度もない。

だからハルは今日も言いつけを破り、事務所の帳面をつける。未収の欄は伸びる一方で、かわりに依頼人が置いていった肉じゃがや大根や子どもの絵が「現物受領」の欄を埋めていく。父が無償で助けた人間を数えているのは、たぶんこの世でハルひとりだ。

部品の闇市・骨市(ほねいち)で出会ったのは、一歩ごとに記録される身体に疲れた少女、真白(ましろ)。
街の真ん中にそびえる医療タワー「白い塔」では、本気で人を治す外科医・東雲律(しののめりつ)が、善意のまま新しい規格を出し続けている。その外科医はハルに言う。
「あなたの身体に合うものを、私は作れます」

右腕、左脚、脊椎、そして心臓へ。回収予告は、父の身体の芯へ近づいていく。

帳に載っているから、取り上げられる。
その街で、父と子は自分の身体を誰にも渡さずにいられるのか。
第一話 踊り子は足を返さない
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2026/10/18 17:40
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2026/10/18 18:40
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1-9
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1-10
2026/10/24 17:40
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