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『バッドエンド確定の荒廃ギルドに事務員として転生したので、まずは『書類の進捗管理』から始めます 〜激情型冒険者たちの喧嘩を1秒で静め、感情の泥沼から組織を救い出す最強の一般人〜』

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/05/18
血のついた剣が
受付台に投げられる

怒号
怒鳴り声
割れた酒瓶
誰かの泣き声

迷宮帰りの夜は
だいたい地獄だ

「誰のせいで失敗した」
「回復が遅い」
「先に逃げたのはお前だろ」

感情が腐って
床にこびりついている

だから彼は
静かに紙を置く

討伐報告書
経費申請書
被害届
始末書

「提出期限を過ぎています」

その一言で
大男が黙る

剣より先に
沈黙が落ちる

彼は強くない

魔法もない
剣技もない
英雄の血筋もない

ただ知っているのだ

壊れる組織の匂いを

終電のない夜を
謝罪会議の白い光を
誰かが机で泣く音を

知っている

だから
怒鳴らない

責めない

代わりに
静かに仕分ける

未対応
対応中
保留
廃棄

感情さえ
タスクに変えてしまう

「喧嘩は十五分までにしてください」
「続きは定例会議でお願いします」
「泣く場合は、先に水分補給を」

冒険者たちは戸惑う

なぜだ

この男は
誰より冷たいのに

誰より
こちらを壊さない

荒れ果てたギルドに
少しずつ増えていく

整理された棚
期限を守る習慣
朝の挨拶
休憩時間

そして

誰かが誰かに
「無理するな」と言う声

それはきっと
奇跡なんかじゃない

ただ
人間が人間を潰さないための
小さな技術だ

迷宮より深い場所で
本当に人を殺すのは

魔物じゃない

積み重なった疲労と
言えなかった痛みと
「助けて」の消失だ

だから今日も
最強の一般人は
書類をめくる

世界を救うためではなく

明日も誰かが
ちゃんと働いて
ちゃんと眠れるように。

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