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品質監理官はそれでも検査したい

作者:こうた
最終エピソード掲載日:2026/09/03
品質監理官はそれでも検査したい

大阪府大東市――。

約8,000万円をかけた舗装工事が、無事に完成した。

工事完成から1か月。
2週間前には下検査も終わり、出来形・品質・施工写真などの書類もすべて整っている。

監理技術者の佐伯は、あとは竣工検査を迎えるだけだと思っていた。

ところが、検査前日に大型台風が大阪を直撃する。

猛烈な雨。
増水する河川。
そして翌朝――工事対象となる道路は、濁った水の中に完全に沈んでいた。

「……道路、どこや?」

「水の下です」

「いや、分かってるけど……」

書類検査は問題なく進む。
完成時の竣工写真も残っている。
写真には、綺麗に仕上がった舗装道路が写っている。

誰が見ても、今さら現場へ行く必要などない。

しかし、品質監理官・黒田は違った。

「現場を確認しましょう」

「黒田さん、道路、水の中ですやん!」

「承知しています」

「舗装、見えませんよ?」

「それでも確認します」

こうして、竣工検査一行は車で現場へ向かう。

しかし車では進めない。

そこで登場するのが――ボート。

現場では自衛隊が逃げ遅れた住民の救助活動を行っている。

その横で、巻き尺を手にする品質監理官。

「何をされてるんですか?」

「竣工検査です」

「……今ですか?」

水没した道路。
見えない舗装。
測れない出来形。

それでも黒田は、なぜか現場を見たい。

そして最後に彼が出した検査結果とは――。

これは、約8,000万円の舗装工事をめぐって繰り広げられる、真面目すぎる品質監理官と、振り回される現場監督たちの物語。

「……何のために来たん?」

その一言が、すべてを終わらせる。
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