初恋を引きずる夫を残し、私は趣味に生きます
最終エピソード掲載日:2026/10/22
「形見といっても、物は物だろう。それに君は丈夫で、寒さにも強い」
結婚して二年、一度も妻として扱われなかった男爵夫人ヴィヴィアン。その箪笥から、亡き母が病床で紡いだ灰色のショールが消えた。持ち出したのは夫のジュリアンだった。病弱な初恋の人が寒がっていたから貸した、と悪びれもせずに言う。
その日のうちに、ヴィヴィアンは金庫の鍵と二年分の家政の覚え書きを置いて屋敷を出た。翌朝、教会へ婚姻の解消を申し立て、その足で、子どもの頃から柵越しに眺めていた丘の上の乗馬クラブを訪ねる。
迎えてくれたのは、元騎兵の指南役レオ。手綱を握りしめて固まる彼女に、彼は叱りもせずに言った。「怖がっていいんですよ」
夫から届いた「今なら寛大な心で許してやる」という手紙には、返事を書かない。ヴィヴィアンはそれを、そのまま教会の調停員に回した。
結婚して二年、一度も妻として扱われなかった男爵夫人ヴィヴィアン。その箪笥から、亡き母が病床で紡いだ灰色のショールが消えた。持ち出したのは夫のジュリアンだった。病弱な初恋の人が寒がっていたから貸した、と悪びれもせずに言う。
その日のうちに、ヴィヴィアンは金庫の鍵と二年分の家政の覚え書きを置いて屋敷を出た。翌朝、教会へ婚姻の解消を申し立て、その足で、子どもの頃から柵越しに眺めていた丘の上の乗馬クラブを訪ねる。
迎えてくれたのは、元騎兵の指南役レオ。手綱を握りしめて固まる彼女に、彼は叱りもせずに言った。「怖がっていいんですよ」
夫から届いた「今なら寛大な心で許してやる」という手紙には、返事を書かない。ヴィヴィアンはそれを、そのまま教会の調停員に回した。