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もういいよ、が聞こえる家 ~かくれんぼで消えた幼なじみを、20年ぶりに探しに行く~

作者:中原九尾
最終エピソード掲載日:2026/10/21
「――もういいよ」

取り壊しの決まった古い屋敷の奥から、子どもの声がした。
それは、20年前に消えた幼なじみの声だった。

東京でシステムエンジニアとして働く真柴蒼、28歳。
管理人の母がけがをしたため、蒼は故郷の町に戻り、ある屋敷の解体に立ち会うことになる。

旧家・久世家。町の子どもたちが「鬼灯屋敷」と呼ぶ家。
庭一面に朱色の鬼灯が生い茂るその屋敷は、蒼にとって、二度と足を踏み入れたくない場所だった。

20年前の夏。
8歳の蒼は、この屋敷で幼なじみの柚葉とかくれんぼをした。
鬼は、蒼だった。
「蒼くん、ぜったい見つけてね」
そう言って隠れた柚葉は、それきり帰ってこなかった。

取り壊しまで、あと10日。

屋敷の中では、時間がずれる。30分のつもりが3時間。
誰もいない廊下を、裸足の子どもが走っていく。
押し入れの壁には、赤いクレヨンで書かれた、何百行もの同じ言葉。

『あおいくん まだかな』

そして、日が暮れて庭の鬼灯が一斉に灯ると、
屋敷の奥から、女の声が聞こえてくる。
「もういいかい」

この家に隠された子どもは、自分の鬼に見つけてもらうまで、出られない。

あの日、本当は何があったのか。
蒼が心の奥に封じ込めてきた記憶とは。

20年分の「もういいよ」に、今度こそ答えるために。
蒼は、もう一度、鬼になる。

神隠しと記憶をめぐる、夏の終わりの和風ホラー。

※全10話・完結まで毎日更新します。
※他サイトでも同時掲載しています。
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