表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『僕たちの青春と恋愛日記

作者:こうた
最新エピソード掲載日:2026/05/14
田舎の小さな高校。逃げ場のない距離感の中で、七人の男子と一人の女子は、同じ時間を共有していた。
転校してきた白石凛は、特別なことをしたわけではない。ただ誰にでも同じように優しく、同じように向き合った。それだけのはずだった。だが、その「同じ」が、少しずつ関係を歪ませていく。
誰かと帰る放課後。たまたま二人きりになる時間。何気ない会話の積み重ね。どれも特別ではないはずなのに、それぞれの中で、確かに“特別”として残っていく。
彼らは気づかないふりをする。これは恋ではない、と。関係は壊れていない、と。だが、見ないようにしていたものは、静かに蓄積されていく。
やがて一人が踏み出す。友情よりも、曖昧な関係よりも、確かな何かを選ぼうとしたその行動が、均衡を崩す引き金となる。
暴かれるのは、裏切りではない。
「全員が、同じものを受け取っていた」という事実。
それぞれが抱えていた“特別”は、実は誰のものでもなかった。その瞬間、誰もが間違っていなかったはずの関係は、音もなく崩壊する。
白石は誰も選ばない。選べないのではなく、この場所では選ぶこと自体が誰かを壊すと知ってしまったからだ。
やがて彼女は村を去る。外から来た男と共に。そこには、この閉ざされた場所にはなかった距離と自由があった。
残された彼らは、それぞれの人生へ進む。結婚する者、過去を整理する者、新しい恋に向かう者。だが一人だけ、すべてを記録していた主人公だけが、その場所に残る。
彼は日記を書き続ける。あの時間を、あの関係を、あの崩壊を。
それが何だったのかを理解するために。
五十歳の誕生日。誰もいなくなった村で、彼は最後の一行を書く。
それは後悔でも、未練でもない。ただ確かに存在した「僕たちの青春」を、静かに肯定する言葉だった。
これは、誰も悪くない恋の話。
そして、誰も救われなかった関係の記録。
それでも確かに、そこには“青春”があった。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ